全羅道は変わらなかった
地球だより
韓国大統領選の取材で訪れた南西部・全羅道の光州で有権者の意外な声を聞いた。「もう湖南(全羅道)だからといって無条件に進歩(左派)を推す時代じゃない」。伝統的な左派の牙城に似つかわしくない意見だった。会社員や主婦、タクシー運転手がどの候補に票を入れるか悩んでいる姿に驚かされた。
昨年の総選挙でも全羅道で異変が起きた。この地で今も信奉者が多い同道出身の金大中元大統領の流れをくむ「共に民主党」が惨敗し、同党を割った非主流派の「国民の党」が圧勝した。民主党主流派が全羅道の人材を登用しなかったことが原因で、大統領選では国民の党の候補、安哲秀氏が保革対立に終止符を打つ中道政治を標榜(ひょうぼう)し、一時、支持率トップに躍り出た。
全羅道といえば、韓国歴代大統領を輩出した保守の地盤、南東部・慶尚道への反感が根強い。インフラ整備、大企業誘致、政官界幹部への登用など多方面で慶尚道に遅れを取り、人口比も2対1と格差がある。ガチガチの左派支持であることが当然視された地域だったから、その“変化”は新しい動きに見えた。
ところが蓋を開けてみると違った。全羅道は過去の選挙同様に左派系候補が圧倒し、保守系候補の得票率は5%ほどにしか届かなかった。有権者の多くが「自分たちの恨み」に寄り添い、助けてくれる大統領は保守系ではないと判断したようだ。
(U)