「アカ」に抵抗感なし?


地球だより

 今回の米中首脳会談で安保や経済などの主要議題とは別に韓国で話題になったのが両首脳夫妻の衣装の色だった。トランプ大統領のネクタイとメラニア夫人のドレスは赤、一方の習近平主席のネクタイと彭麗媛夫人のドレスは青。「相手国を象徴する色を身に着け互いに敬意を表した」というのがこちらのメディア評だ。近年、中国との経済関係を無視できず、米中どっちつかずの外交が目立つ韓国にとっては微笑ましい(?)光景だろう。

 ところでフランス革命以後、赤は世界的に社会主義や共産主義を象徴してきたが、かつて国際共産主義陣営の一員で、今は首領独裁主義の北朝鮮と対峙してきた韓国では長く北朝鮮を象徴する“敵対色”だった。一昔前の話だが、北朝鮮と中国の国境沿いにある白頭山の麓にあるホテルを取材して韓国に戻ると、ある初老の韓国人男性に「パルゲンイ(赤い奴=共産主義者)にインタビューして無事だったかい?」と言われたことがあった。

 だが、そんな赤も今ではすっかり“市民権”を獲得した。2002年のサッカーW杯日韓共催の韓国サポーター「レッド・デビル(赤い悪魔)」はお揃(そろ)いの赤いTシャツを身にまとい、スタジアムや街頭を真っ赤に染めた。右派政党は青、左派政党は赤と相場が決まっていた政党イメージカラーも近年、逆さまに色を用いている。

 国民の赤に対する抵抗感は弱まったが、北朝鮮の“若大将”は先代、先々代をしのぐ独裁強権であるし、中国は軍事・経済力を背景に覇権主義に突っ走っている。赤にどこか違和感を抱いてきた世代の感覚だけは忘れないでもらいたいものだ。

(U)