変化をもたらす指導者
地球だより
フランスは来春の大統領選挙に向け、政治への関心が高まっている。英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた今、フランスは今後どうするべきなのか、否が応にも政治への関心が高まらざるを得ない状況だ。
大手不動産開発会社に勤めるミカエルさんは「サルコジ(大統領)に期待し、オランド(大統領)に期待したが、今は政治家には失望している」と言う。「政治家は皆、国民受けするいいことを言うけど、偽善者で既得権益を守るのに必死」と政治不信を露にする。ミカエルさんはそれでも「変化をもたらす指導者が必要だ」と思っているようだ。
パリ西部郊外ベルサイユ市の市役所に勤めるマリアレーヌさんは「私は中道右派の大統領候補者のフィヨン氏が、公務員を大幅に削減する案に賛成」と言う。25年間勤めた民間企業から転職して公務員になった彼女は「私の今の部署では、8人が働いているけど、あの仕事量だったら4人で十分」と語る。
来年、定年を迎えるマリアレーヌさんにとっては、解雇のリスクは少ないので言えることだが、フランスでは既得権益を持つ公務員の改革は、非常に難しいといわれている。フィヨン氏ならやり遂げられるだろうとの声も聞かれる。
一方、昨年100万人以上の移民・難民がシリアやイラク、アフリカから押し寄せた欧州では移民対策は重要だ。特に彼らが持ち込むイスラム教は社会に大きな変化をもたらしている。仏西部のレンヌ大学で教鞭(きょうべん)を執るブノワ氏は「カトリック信仰が極端に弱っているフランスで、イスラム化を恐れるフランス人は多い」と指摘する。
今、次期大統領ポストに最も近いといわれる中道右派・共和党のフィヨン元首相が熱心なカトリック教徒だというのも、移民や宗教問題と無関係とはいえない。左派の政治家は事大主義とか、ノスタルジーと馬鹿にするが、伝統回帰への関心は高まる一方だ。
でも多くの国民は、景気が回復し、皆が職に就いて、治安が安定するのであれば、政治信条なんてどうでもいいと考えているようだ。そんなフランス人は確実にフランスに変化をもたらす指導者を待望していると言えそうだ。
(A)