米大統領選の再現なるか
地球だより
オーストリアで来月4日、大統領選が実施される。5月22日の決選投票のやり直し選挙だ。「緑の党」元党首アレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)と、極右政党「自由党」議員で国民議会第3議長を務めるノルベルト・ホーファー氏(45)の2人の候補者の間で争われる。
ドナルド・トランプ氏が米大統領選でヒラリー・クリントン氏を破ったばかりだ。その余勢を駆って、ホーファー氏が「わが国でも…」と威勢がいい一方、ベレン氏は、「わが国に欧州最初の極右大統領を選出してはならない」と有権者に警告を発している。
情勢は、リベラル派代表だったクリントン氏にトランプ氏が挑戦した米大統領選に少し似てきた。米大統領選では、世論調査では潜伏していた「隠れトランプ票」の存在に注目が集まったが、オーストリア大統領選でも「隠れホーファー票」が勝敗を決定する可能性があるとささやかれだしているのだ。
同党はネオナチとの関係がささやかれ、オーストリア・ファースト、反ユダヤ主義、外国人排斥を掲げ、難民の収容には消極的な立場をとってきた。左派系メディアや与党・社会民主党の影響が強い国営放送は自由党批判の先頭にたってきた。「君はネオナチか」と疑われるのを嫌う国民も結構多い。学生など若い層の知識人の中には「ホーファー氏を支持する」と公言することを避ける傾向がある。民族主義者と受け取られ、世界観が狭いと見られることを恐れるからだ。その点、米国人の「隠れトランプ支持者」と似ているわけだ。
トランプ氏の衝撃が欧州の政界にどのような影響を与えるか、オーストリア大統領選はそれを知る格好のテストケースだ。
(O)