フランスで募る移民への嫌悪
地球だより
フランスは昨年来、死者を出すテロ事件が頻発し、市民生活にも不安が広がっている。同時にテロの標的や方法の多様化に対して、テロ対策を行っている当局が適切な措置を取っていないとの批判の声も高まっている。
昨年1月の風刺週刊紙シャルリエブド本社襲撃事件は、イスラム教をからかう編集部が標的だった。その数日後のユダヤ食品店の立てこもり事件も標的ははっきりしていた。ところが昨年11月の同時テロは、カフェやバタクラン劇場での無差別テロだった。
そして、革命記念日の今年7月14日夜に南仏ニースで起きたトラックで群衆に突っ込むテロも標的は無差別だった。ところが7月末に起きたノルマンディーのルーアン近くの町のカトリック教会で起きたテロでは、キリスト教の司祭を標的としていた。
カトリック教会のテロを受け、パリのノートルダム寺院が標的になるのではという懸念の声が上がっている。今やいつどこでもテロは起きるという不安が広がっているが、フランス人はテロを恐れるのは負けだと毅然としている人が多いが、不安は否定できない。
そんな中、ルーアン近郊のテロの起きた町では、事件の起きた教会とイスラム教モスクの両方で追悼式が行われ、その映像が全国に流された。人口3万人に満たない小さな町にもかかわらず、モスクには非常に多くのイスラム教徒が集まった。アラブ系移民が少ないと言われたカトリックの強いノルマンディー地方の新たな現実を見せつけられた形だった。
フランス人の友人の一人は「あの映像を見ると、もう自分たちの国ではないと思った」と言った。確かにパリでもタクシー運転手には、アラブ系の人が非常に多いし、地下鉄に乗っても白人を探すのが大変なほど、さまざまな肌の人々が乗っている。
お隣の英国が欧州連合(EU)離脱を決めた理由の一つが大量移民流入だったように、ますます、移民への嫌悪感がフランス社会に広がっていることを感じる日々だ。
(M)