軽視できぬ北核・ミサイル戦力
先月22日、北朝鮮は新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」6発目の発射に成功した。
北朝鮮が保有する弾道ミサイルは、まず射程300~500㌔の「スカッド」型が約600基で、これらはソウルまで3分、釜山まで5分で着弾する。射程1300㌔の「ノドン」ミサイル(200基保有)は東京まで8分で着弾する。
今回、成功したムスダンミサイル(50基保有)は射程3500㌔でグアムの米軍基地が標的になる。さらに、北朝鮮は2012年12月と16年2月に射程1万3000㌔の長距離弾道ミサイル(ICBM)を発射した後、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を繰り返している。
韓国は北朝鮮の弾道ミサイルの技術力を過小評価してきたが、北朝鮮は核開発も相当進んでおり、今年の4回目までの核実験を通じて核弾頭の小型化も進んでいる。核を弾道ミサイルに搭載する技術力が整いつつあるのだ。
米国の北核専門家ヘッカー米スタンフォード大教授は15年1月、北朝鮮がプルトニウム型爆弾6個とウラン型6個を保有していると主張した。さらに米ジョンズ・ホプキンス大米韓研究所などの研究報告書(同年2月)は、北朝鮮が14年に10~16個の核兵器を保有しており20年までに最大100個保有する能力があると予測している。
有事の際、北朝鮮が核ミサイルでグアムを攻撃すると威嚇すれば米韓同盟の大きな脅威となる。今回、ムスダン発射を通して北朝鮮は「1400㌔以上の高高度から大気圏再突入に必要な耐熱技術が検証された」と評価した。摂氏6000度の耐熱技術を開発中のICBMに適用すると北朝鮮の核ミサイルの脅威は増大され、米国の拡大抑止(extended deterrence)と同盟公約実行が困難になる恐れがあるのだ。
現在のPAC3迎撃ミサイルはムスダンミサイルのように高高度からマッハ20の速度で大気圏に再突入し、マッハ10の速度で落下するミサイルは迎撃が難しい。従って終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイルの配備が必要不可欠だ。
サード配備の予算を全額韓国が負担するとか、サードのレーダーの電磁波が数㌔まで有害だとかいわれているが、筆者が調べたところ、事実無根だった。国家の存亡を左右する安保政策は常に最悪のシナリオを想定しなければならない。
(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)






