フランスに移住した英国人の怒りと不安
地球だより
フランスには、約40万人の英国人が住んでいる。それも仏国立経済統計研究所(INSEE)の統計によると2009年から、何と50%も増えている。理由は経済的理由もあるが、フランスの恵まれた気候や自然を求めての移住者も多い。
英国の欧州連合(EU)離脱が決まったことを受け、フランス在住の英国人たちは、口々に憂慮する発言を行っている。例えば、英国移住者が多いブルターニュ地方のサン・マロに住むポールさんは「英国はとんでもない決断をしてしまった。これで死ぬまでフランスで暮らすことが決まった」と失望をあらわにしている。
ポールさんは2年前、65歳の時に英国ブリストルからサン・マロに越してきた。老後をフランスで過ごしたい英国人は非常に多く、そのためのエージェントでもある。ブルターニュは英国に近く、英国との歴史的関係も深い。英国との航空路線やフェリーも充実しており、ブルターニュには英国人移住者の方がフランス人より多い村もあるくらいだ。
ワインで有名なブルゴーニュ地方のボーヌ郊外の村で老後を過ごすチャールズさんは、4年前に取材したことがあり、今回の英国離脱問題で電話してみた。すると電話口から「私は本当に怒っている。半分の英国人は愚か者だ。英国の愚かな右翼政治家にだまされてしまった」と怒りの声が聞こえてきた。
若い移住者もいる。3年前からブルターニュのレンヌ近郊で暮らす英国人家庭のロザリンさんは「これからどうなるのか不安です。決定を聞いて涙が出てきました。子供を今後、どこで育てるか真剣に考えないといけない」と涙声で語ってくれた。
フランスに住む英国人は、英国のEU残留は絶対条件と考える人がほとんどで、その怒りと不安は今後さらに増幅しそうだ。無論、逆のケースもパニック状態だ。ロンドンで暮らすフランス人たちも不安に陥れられている。
移動の自由を享受してきた人々、特に子育ての真っ最中の人々、仕事を求めて英仏両国の間で移住した人々は、今後、人生が大きく左右される可能性があり、今後どうなるのか頭を抱えている。
(M)