「支持率100%」の強み


地球だより

 このところ韓国のニュース番組は半月後に迫った総選挙の話題で持ち切りだ。与党は公認選びをめぐる内紛、野党陣営は難航が予想される候補一本化でいずれも波乱含みだが、勝った方は来年の大統領選に弾みがつく。世論調査では保守系の与党が有利な情勢だ。

 ところで韓国政治が保守か革新かにいつも神経をとがらせるのが北朝鮮だ。案の定、今回も保守優勢が気に食わないと見え、ちょっかいを出し始めた。党機関紙・労働新聞を通じて「野党が分裂すればセヌリ党にだけ漁夫の利を与える」と、野党結束を促している。

 以前、北朝鮮南西部に位置する開城をめぐる観光ツアーに参加した時、案内人と称する北朝鮮の監視要員と政治談議になった。彼は当時の福田康夫内閣の支持率低迷や韓国で起きた李明博政権退陣デモなどを記者に尋ねた上で、「共和国(北朝鮮)は(最高指導者も選挙も)人民から100%の支持を受け選ばれる」と妙に誇らしげだった。

 その時は「やらせの信任投票なんて」と歯牙にもかけなかったが、この「100%支持」こそ独裁政権を支えてきたと思うと、選挙のたびに保革の政権交代があり得る日本や米国などは北朝鮮に足元を見られているようで複雑な心境だ。

 北朝鮮は決してブレることがないのに、周辺国は北朝鮮に揺さぶられ、脅され、裏切られるの繰り返しだ。こっちも対北政策だけは「100%支持」といかないものなのか…。

(U)