外国人率25%の悩み


地球だより

 スイスで2月28日、右派政党「国民党」(SVP)が提出した犯罪を犯した外国人の追放の強制履行の是非を問う住民投票が実施され、反対が58・9%を占め、拒否された。

 スイスでは2010年、犯罪を犯した外国人の退去要請を明記した厳格な「外国人法」が採択されたが、SVPは「十分ではない」と判断し、今回のイニシアチブ(国民発案)となった。同イニシアチブは犯罪を犯した外国人を強制的に国外追放できる。スイスで生まれた外国人も含まれる。

 殺人や傷害事件といった重犯罪だけではなく、児童手当の不当な入手や交通事故関連違反など軽犯罪でも適用される。入国禁止は5年から15年間。再犯者の場合は20年間という内容だ。

 10年に採択された外国人法は、該当する外国人の自主的退去を要請するもので、司法側は退去要請にストップを掛けることも可能だった。だからSVPは「10年の外国人法は実際は履行されないケースが多かった」と主張する一方、同案に反対する国民は「イニシアチブは欧州の人権憲章に反する」と反論してきた。

 アルプスの小国のスイス(14年人口約820万人)には約200万人の外国人が住んでいる。スイスの外国人率は約25%だ。国民の4人に1人がスイス国籍を有していないことになる。  外国人率は欧州の中でも飛び抜けて高い。同国に住む外国人の大多数は欧州出身者だ。スイスには国際企業が多く、多数の外国人が勤務している。このためSVPのイニシアチブが受理されれば、それに該当する外国人は少なくない。軽犯罪でも強制的に国外追放されるとなれば、スイスで勤務を願う外国人が少なくなることが予想される。

 なお、スイスのカトリック教会司教会議関係者は「今回の結果を歓迎する。SVPのイニシアチブは不要であり、外国人にとって非情だ」と指摘している(バチカン放送独語電子版)。

(S)