「北朝鮮」ではメシ食えず


地球だより

 北朝鮮を震源とする人工地震が感知されたその時、筆者はたまたま韓国の北朝鮮専門家の事務所に来ていた。話をしていると彼の携帯電話にひっきりなしにニュース速報のSMS(ショートメッセージ)が入ってきた。北の国営テレビが「水爆実験成功」を発表すると、あちこちのテレビ局から特番のコメンテーターとして出演してほしいという依頼が殺到した。結局、彼は私との昼食の約束をキャンセルし、あたふたと出掛けて行った。

 大学教授やシンクタンクの研究員、脱北者に至るまで韓国のいわゆる北朝鮮通は北で何かが起きるたびに急に忙しくなる人たちだ。テレビに出るのは専門家としての実力が試され顔を売るチャンスにもなるが、ベールに包まれた内部実態の確認が難しい北を解説・分析するには限界がある。一般の国民があまり知らないということに甘え、専門家ヅラしていれば通用してしまうところもある。

 ところで近年、南北分断が固定化され韓国人の意識から北の存在がどんどん遠ざかったことで北を「知っていること」がそれほど重要視されなくなった。大学の北朝鮮学科は卒業生の就職に役立たないという現実が影を落とし、次々に併合・閉鎖・縮小の憂き目に遭っているという。あの“独裁坊”の暴走は全く治まる気配を見せていないのに、韓国では「北朝鮮」だけではもうメシが食いにくいという皮肉な時代だ。

(U)