4月に韓国総選挙・来年大統領選、「政治の季節」迎え駆け引き
与党「慰安婦」合意に苦心
4月の総選挙、来年12月の大統領選などを控え韓国政界が浮き足立っている。特に劣勢が続く野党は政権交代を目標に再編の動きを加速させている。与党も昨年末のいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意に対する国内反発への対応などに神経をとがらせている。(ソウル・上田勇実)
野党 北「水爆」制裁では温度差
朴槿恵政権になって再・補欠選挙などでも負けが続き精彩を欠いていた野党がついに動き出した。最大野党の「共に民主党」(旧、新政治民主連合)で共同代表を務めた安哲秀議員が離党し、今月「国民の党」という新党を結成した。
安氏は「国民の、国民による、国民のための政治」を目指すと述べ、古巣の共に民主党とは一線を画し選挙協力もしない考えを既に表明している。
共に民主党は現在の党首である文在寅代表が2012年の大統領選で朴槿恵氏と一騎打ちを演じて負けた後、安氏らが共同代表を務める体制で再出発したが、再・補欠選挙での敗北の責任などを負って辞任。再び文氏が代表を務めている。
朴政権になって野党は大型旅客船「セウォル号」沈没事故や歴史教科書国定化などを政権批判の材料にし、過激な左翼団体や労働組合を先頭に立たせた政権退陣運動のデモなどで形勢挽回の機会をうかがってきた。だが、思うように支持率が上がらず、このままいけば政権交代は難しいとの危機感が広がっていたようだ。
安氏の新党立ち上げは、世論から「古い」と思われている野党政治と決別し、国民に振り向かれる「新しい」野党政治の求心力に自らがなって政権交代の動力を回復させようというものだ。安氏に続く離党組も出始め、共に民主党の伝統的地盤である南西部の全羅道から高い支持を得ている。
世論調査機関・韓国ギャラップが先週発表した調査結果によれば、政党支持率で与党セヌリ党は35%で最も高かったが、次いで野党の国民の党が21%、共に民主党が19%だった。「分からない・無回答」が22%あり、各党とも無党派層などの取り込みが今後の課題として残っているが、これまで頑として動かなかった「与強野弱」という構図に若干の変化の兆しが見られ始めたと言える。
一方、セヌリ党は基本的に高支持率を得てきたが、先の「慰安婦」日韓合意で韓国政府が日本に譲歩し過ぎたのではないかといった世論が強く、合意を一定評価した同党としては世論の逆風にあおられかねない状況だ。
40%台をキープしてきた支持率が35%に下落した主な要因も「慰安婦」合意にあるというのがギャラップの分析で、今後、政府が在ソウル日本大使館前にある慰安婦を象徴する少女像の撤去問題への処理を誤れば、再下落は避けられないとみられている。
過去の韓国選挙を見ると、北朝鮮の軍事的脅威が一定の影響を及ぼしたのも事実だ。以前は「北風」が吹けば警戒論が広がって保守系に有利だったが、近年では「戦争か平和か」という二文法的な問い掛けで有権者に戦争への恐怖心をあおった左派系に有利に働いた例もある。
今回の北朝鮮による4回目核実験に対し与野党は国会で満場一致の「糾弾・廃棄要求」決議案を採択しており、これがそのまま争点になることはなさそうだ。
ただ各論に入ると、例えば制裁の程度ではセヌリ党が「可能な限りあらゆる手段で行うべき」としているのに対し、共に民主党は「制裁だけでは防げない」、国民の党も「大枠では制裁に同意」と温度差がある。
朴大統領が「相応の代価」と発言した後に再開された軍事境界線での大型拡声器を使った対北心理宣伝放送については「応当な措置」(セヌリ)「不可避な措置」(国民の党)に対し共に民主党は「根本的な対策にならない」と慎重だ。
追加の武力挑発などで北朝鮮リスクが選挙戦の争点になった場合、どちらに有利に働くか予断を許さない状況だ。
「経済民主化」を公約に掲げて当選した朴大統領の経済政策は道半ばだ。依然として所得格差は大きく、庶民経済は低迷感にあえいでいる。本来は政権与党にとって悪材料だが、野党側の批判はそれほど世論に響いていない。






