CTBTO事務局長、北と昨年接触


 北朝鮮は来月10日の労働党創建70周年前後にミサイル実験か4回目の核実験を実施するのではないかという噂が流れている。外電によると、北朝鮮の寧辺核関連施設にある黒鉛減速炉や再処理施設周辺で車両の動きが活発化しているという。プルトニウムを抽出する再処理作業を準備しているという情報も流れている。

 ちなみに、2013年9月、寧辺の5kw黒鉛減速炉周辺の上空から放射性希ガスが検出されたという情報が流れた。その時、「核兵器の生産に直結する使用済み燃料棒の再処理施設が稼動した可能性は考えられるが、黒鉛減速炉は古く、再稼動させたとしても余り大きな成果は期待できない」(国際原子力機関=IAEA元査察官Y・アブシャディ博士)という専門家の声も聞かれた。

 北朝鮮は過去、3回の核実験を実施した。ウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)のデータに基づいて北の3回の核実験データを読者に紹介する。

 北は過去3回の核実験を咸鏡北道豊渓里(東経約129・1度、北緯約41・3度)の実験場で実施した。2006月10月9日に実施された1回目の爆発規模は1キロトン以下、マグニチュード4・1(以下、M)、2回目(09年3月25日)の爆発規模は3-4キロトン、M4・52、3回目(13年2月12日)は爆発規模6キロトンから7キロトン、M4・9だった。

 核爆発によってもたらされる地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動をキャッチする国際監視システム(IMS)は337施設から構成され、現在約90%が完了済みだ。1回目の核実験では地震観測所110カ所中、北の核実験をキャッチしたのは22か所。2回目は130施設中、61か所、3回目は157か所の地震観測所中、94か所が捉えた。核実験後、国際データセンター(IDS)から加盟国に通達されるまでの時間は、1回目は不明だが、2回目は1時間半、3回目は1時間以内だった。IDSのデータ処理が確実に早まっている。

 問題は、爆発が核関連物質によるか否かを決定する放射性物質希ガスの検出有無だ。北朝鮮の核関連施設から放出される放射性希ガスを探知できる最短距離にある施設は、ロシア、モンゴル、そして日本の3カ所の放射性核種観測所だ。1回目はキセノン133(Xe133)が実験2週間後の10月21日、カナダのイエローナイフ観測所で検出された。2回目は検出されずに終わった。3回目は核実験55日後の4月8、9日、日本の高崎放射性核種観測所でキセノン131、キセノン133が最初に検出された。

 CTBTO準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は北の核実験がウラン核爆発か、プルトニウム核爆発かについては、「われわれはキセノン131とキセノン133を検出したが、北の核爆弾がウラン爆弾かプルトニウム爆弾かを判断するためにはもっと情報が必要だ。ただし、CTBTOは核実験の種類を判断する権限を有していない」と説明している。
 
 北朝鮮はCTBT条約を署名していない。ゼルボ事務局長は、「北朝鮮が招待してくれたら平壌を喜んで訪問する」と答えていたが、欧州外交筋が当方に明らかにしたところによると、「事務局長は昨年11月、モスクワで開催された国際会議の場で北朝鮮代表団と非公式に接触した」という。会見の詳細な内容は不明だが、北側のCTBT条約の署名、批准、事務局長の北訪問時期などについて意見の交換が行われたと見られている。

【CTBT条約】1996年9月10日、国連総会で採択され、署名が始まった。9月現在、署名国183カ国、批准国164カ国。条約発効に批准が不可欠な核開発能力保有国44カ国中8カ国が批准を終えていない。米国、中国、イスラエル、イラン、エジプトの5カ国は署名済みだが、未批准。インド、パキスタン、北朝鮮の3国は署名も批准もしていない。第9回CTBT条約発効促進会議が今月末、ニューヨークの国連本部で開催される。岸田文雄外相がカザフスタン代表と共に共同議長を務める。

(ウィーン在住)