元気な“骨董保守”


地球だより

 ソウルの有名な観光スポットの一つに仁寺洞という所がある。陶磁器や絵画などを扱った店が軒を並べ、韓国式家屋や石畳が風情を醸し出すいわ ば骨董(こっとう)通りだ。

 骨董と言っても、知人の韓国人は都会のオアシスのようなここがえらくお気に入りで、待ち合わせ場所にいつも指定してくる。連日、観光客で ごった返すのを見ても、もう古くなって一部の人だけが価値を認めるという意味での骨董という表現は似合わない。

 「骨董ならぬ骨董」という意味では、“骨董保守”と呼ばれる年配の保守派もそうだろう。米国の支援を受け北朝鮮と戦った韓国動乱を知る親米、反北の世代でもある。

 “骨董保守”の代表選手として知られるある論客が、最近テレビ番組に出演し、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するシステムの導入をめぐり、レーダー網が自国領まで及ぶことを理由に露骨に反発している中国を「主権侵害」と一喝していた。中国の態度は「朝鮮を朝貢国とみなした明の時代と 同じだ」とも。

 “骨董保守”には、かつて反共路線で利害が一致した日本に対する理解者も少なくない。当時は「民主主義と市場経済という価値観を共有」していると互いが感じていた懐かしい時代だ。昨今の反日世論全盛の中、骨董だからと世論の片隅に追いやられることもなく、気を吐いている彼らのたくましさは、せめてもの救いだ。

(U)