バチカンで「女性の進出」広がる


 明日(8日)は「国際女性の日」だ。それに関連して、ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁の広報の役割を担うバチカン放送が5日、バチカン内の女性職員の数やその占める割合を発表した。それによると、過去10年間でバチカン市国内の女性職員数は195人から371人とほぼ倍化。また、バチカン内のローマ法王直属職員数でも女性の割合は13%から19%に増加したという。

 参考までに、ジュネーブに本部を置く列国議会同盟(IPU)は5日、各国議会に占める女性の割合を公表したが、日本は190カ国中113位だったという。衆議院の女性議員の割合は9・5%と2桁に届かなかった。安倍晋三首相が5日、女性議員を集め、女性の地位向上を鼓舞していたが、日本の政界では依然男性支配が続いているわけだ。

 話をバチカンの女性の職場進出に戻す。バチカン法王庁内の女性職員数は391人で、全体の18%を占めている。2011年は女性職員数は288人で全体の17%だった。換言すれば、5人に1人は女性職員となる。バチカン市国とバチカン法王庁内の女性職員の総数は762人だ。ただし、その数字には枢機卿のもとで働く家政婦などは含まれていない。なぜならば、彼らの多くはバチカンとの雇用契約を結んでいないからだ。

 興味深い点は、バチカン法王庁で働く女性職員の職種はバチカン市国の女性職員よりも相対的に専門職でランクは高いことだ。博物館や図書館で勤務する女性職員の位階を4とすれば、法王庁内に働く女性職員の平均位階は7という。彼女たちは高学歴者が多い。バチカンの人事課によると、法王庁勤務の女性職員の41%は大卒者だ。例えば、古文書管理課、歴史家、ジャーナリストたちだ。

 女性職員の中で管理職の地位(次官級)を有する女性は目下、2人だけだ。2人ともイタリア人女性で、1人は修道院担当省次官の Nicoletta Spezzati 女史、もう1人は「正義と平和評議会」次官の Flaminia Giovanelli 女史だ。バチカンでも本格的な女性進出は教会の近代化を決定した第2バチカン公会議(1962~65年)以降だ。

 参考までに書くが、カトリック教会には女性軽視の傾向がこれまで強かった。 「教会の女性像」の確立に中心的役割を果たした人物は古代キリスト教神学者アウレリウス・アウグスティヌス(354~430年)だ。彼は「女が男の為に子供を産まないとすれば、女はどのような価値があるか」と呟いている。中世時代に入ると、「神学大全」の著者のトーマス・フォン・アクィナス(1225~1274年)に一層明確になる。アクィナスは「女の創造は自然界の失策だ」と言い切っているほどだ(「なぜ、教会は女性を軽視するか」2013年3月4日参考)。

 なお、南米出身のローマ法王、フランシスコ法王は「女性を法王庁の意思決定機関に多く登用すべきだ」と主張してきた。ただし、法王は女性に対して聖職者の道を開く考えはなく、バチカン内の管理職への登用拡大を願っているだけだ。

 ローマ・カトリック教会では、英国国教会やプロテスタント教会と異なり、女性聖職者は認められていない。ただし、カトリック教会の歴史では一度、女性法王ヨハンナが西暦855年から858年まで就任していたという文献も存在するが、歴史家の多くは「伝説に過ぎない」と否定的に受け取っている。

(ウィーン在住)