「天使」には本来、翼がなかった


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ペーテル・パウル・ルーベンスの絵画「聖母被昇天」(天使には翼が付いている)

 欧州の街は今、クリスマス一色だ。足早にプレゼントを買う人々、仕事帰りにクリスマス市場に出かけ、ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくしたプンシュ(Punsch)を飲む人々の姿が見られる。日が暮れると家々の窓からクリスマスの飾りの光が外にこぼれてくる。Christkind の訪れを待つ小さな子供たちは、願い事を託して楽しみに待つ。

 ところで、クリスマスになると、忙しくなるのは天使たちだ。「天使」といってもピンとこない人が多いだろう。聖書によると、天使は神の僕であり、神に頌栄を捧げる存在だ。天使には、ルーシェル、ガブリエル、ミカエルの3大天使がいる。例えば、聖母マリアへの受胎告知は天使ガブリエルの業だった。

 「天使」といえば愛らしい存在と考えやすいが、残念ながら事実ではない。17世紀の英国詩人・ジョン・ミルトンの「失楽園」(Paradise Lost)の中で記述されているように、天使(ルーシェル)は人類始祖を罪に誘っている。すなわち、“堕落した天使”だ。ただし、ここではクリスマスの雰囲気を壊すので“堕落天使”の話はしない。

 「神の使い」として創造された天使には翼があるというイメージがあるが、「天使にはもともと翼がない。4世紀半ばに入って初めて翼をもつ天使が登場してきた」という考古学の研究がこのほど明らかになった。カトプレス通信が14日、ボン発で報じた。

 同通信によると、独ボン大学キリスト教考古学研究所は紀元前1000年から紀元後1000年の2000年間の269件の考古学文献や絵画、ミイラなどを研究した。それによると、天使は当初、翼はなかった。翼をもつ天使が初めて文献や絵画に登場したのは紀元後4世紀半ばに入ってからだ。“神の使者”天使は短い服を着、小さな棒をもった男性として描かれてきたが、ローマ神話の“勝利の女神ヴィクトーリア”(翼をもつ)のイメージと合流し、翼のある存在として変身していったというのだ。

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聖シュテファン大聖堂近くのクリスマス・ツリー(2014年12月17日、ウィーンで撮影)

 天使は霊的存在だからもともと翼はいらないが、時空を超えた存在であることを強調するため翼を付けて描かれ始め、時間の経過と共に今日の“天使像”となっていったのだろう。

 当方はこのコラム欄で「天使と交信出来る王女様がいる」という話を書いた。ノルウェー王ハーラル5世とソニアの長女としてオスロで誕生したマッタ・ルイーゼ王女(43)は2002年、同国の作家アリ・ベーンと結婚し、3人の娘さんがいる。2012年2月、エリザベス・ノルデング女史との共著で「天使の秘密」というタイトルの本を出版している。天使に関する2冊目の本だ。天使の存在を人々に紹介したいから本を出版したという。王女によると、「天使は私たちの周辺にいて、私たちを助けたいと願っています」という。王女は幼い時から天使と交信してきたという。(「『天使』と交信できる王女様」2012年8月24日参考)。

 ルイーゼ王女の前に出現する天使は翼を付けているのだろうか、それとも翼のない本来の姿だろうか。一度、尋ねてみたいものだ。
 クリスマスが近づいてきた。読者の皆様には楽しいクリスマスを迎えていただきたい。

(ウィーン在住)