北朝鮮を脅せ?
地球だより
ソウル駐在期間中、北朝鮮の地に足を踏み入れたことが2度だけある。金剛山観光と開城観光に参加した時だ。陸路、軍事境界線を越え、しばらく行くと目に入ってきた光景にわが目を疑ったのを覚えている。樹木がない山、古びた瓦屋根の家や舗装されていない埃(ほこり)だらけの道路、ボロ服に身をまとい真っ黒に日焼けした住民たちの姿は、白黒フィルムを見るようで、優に半世紀以上は昔にタイムスリップした錯覚に陥るほどの衝撃だった。「こんな国に誰がした」という怒りにも似た思いが沸々とわいたが、ツアーバスに同乗していた韓国人観光客の感想は違った。「統一したら絶対ダメ」と真顔で答え、こんな貧乏な国と一緒になったら自分たちが経済的に苦労すると言う。普段は同民族云々する韓国人の「別の顔」を見る思いだった。
朴槿恵大統領は就任以来、「統一大当たり論」で事実上の韓国主導による南北統一に意欲を見せているが、果たして国民の本音はどうなのだろうか。経済至上主義が蔓延(まんえん)し、自分たちの生活だけで頭がいっぱいなのに、そんな重たい荷物まで背負わせないでもらいたいという気持ちだとしたら、任期中に道筋を付けるのはたやすくない。
北朝鮮問題の全てのネックはあの「首領独裁」にある。あるタカ派論客は「力とカネで解決できる」と言う。軍事挑発や脅し文句でゆすぶってくる相手には、逆に圧倒的な軍事力を背景に体制を崩壊させるゾと言って恐怖心を抱かせた上で、言うことを聞くなら支援すると持ち掛ける。乱暴な方法だが、世襲3代まで来た北の独裁はもうごめん被りたい。現在、拉致問題で北に向き合っている日本も、ある種の“覚悟”が必要ではないか。
(U)