「教会は同性愛者を歓迎する」


 今月5日から開催中のローマ・カトリック教会の特別世界司教会議(シノドス)は18日、参加者の発言などを総括した最終報告書をまとめ、2週間の協議日程を終えた。世界から191カ国の司教会議議長や専門家たちが結集して、家庭に関連した様々なテーマ、離婚、再婚、避妊、純潔、同性婚などについて話し合ってきた。シノドスの最終報告書は議決権を有する174人の参加者のうち158人が支持、賛成多数で承認された。ジャンフランコ・ラバシ枢機卿ら3人の枢機卿が同日、記者会見で明らかにした。

 バチカン放送独語電子版によると、報告書では、シノドス参加者は家庭が現在直面しているさまざまな挑戦を真摯に受け取り、「教会は全ての人々に開かれた家」と明記している。

 「キリスト者たちは自分の教会が常に開かれて、誰をも排除しない家であることを願っている。それゆえに、家庭の問題を共に考え、痛みを共に分かち合う牧会者、信者たち、共同体の人々に感謝する」

 シノドスの焦点の一つであった離婚・再婚者の聖体拝領問題については、「関係者は次期シノドス(来年10月開催予定)まで共同の解決策を見つけていこう」と呼びかけている。同性愛者については、「教会は同性愛者を歓迎する」という。

 ちなみに、シノドス開催中、オーストリアのカトリック教会最高責任者のシェーンボルン枢機卿はイタリア日刊紙コリエーレ・デラ・セラとのインタビューに応じ、同性婚について「自分はウィーの同性婚者を知っている。彼らは重い病気を抱えているが、互いに助け合って生活している。私は彼らに尊敬を払っている」と述べている。同枢機卿の発言は保守派聖職者たちに驚きをもって受け取られたばかりだ。

 参考までに、教会の教理の番人、バチカン教理省長官のゲルハルト・ミュラー枢機卿は「イエスは罪びとをも愛した、その教えは不変であり、慈愛は重要だが、あくまでも真理と一致したものでなければならない」と指摘し、同性婚は神の計画とは一致しないから、容認されることではないという立場を主張している。

 最終報告書を読む限りでは、枢機卿の間で同性愛問題について従来の批判的な姿勢は影を薄めてきたことが分かる。中間報告書の中に記述されていたように、「教会は同性婚者を夫婦と見なすことはできないが、兄弟姉妹として受け入れることは可能」といった立場だろう。離婚・再婚者への聖体拝領問題に対しても同じだ。婚姻は決して解消できないが、離婚・再婚者に対して拒絶するのではなく、慈愛の立場で対応していく、といった流れだろう。

 世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は今日、教え(ドグマ)を懸命に死守する一方、世俗社会からの要請にこれまで以上に柔軟に対応していく方針に軌道修正中、というのが現状だろう。

 特別シノドスの最終文書(Relatio Sinodi)は来年10月の通常シノドスの協議の柱となる。

(ウィーン在住)