「人生変えませんか」


地球だより

 先日、知り合いの韓国人に誘われ、米国企業がこちらで展開するマルチ商法(連鎖販売取引、ネットワークビジネス)の説明会に参加した。以前から韓国ではこの手の商法が盛んな半面、失敗するケースも多かった。何度も誘ってくるので「一度だけなら」という約束で行くことにした。

 説明会では30代の男性が颯爽(さっそう)と現れ、自身の成功談を披露した。3年前までは大学で働き、月給200万ウォン(約20万円)もらっていたのが、このビジネスに出会い、今は月1億ウォン(約1000万円)を稼ぐまでになったという。ガソリン代の捻出に苦労し、燃料費が安く、免税対象のLPG(液化石油ガス)車に乗り換えるため、知人に頼み込んで障害者手帳を貸してもらうほどだったのが、このビジネスのおかげで家族全員に1台ずつベンツをプレゼントすることができたのだそうだ。

 マルチ商法の是非はさておき、「人生このままでいいんですか」「もっと大きな夢(お金)を持てるとしたらどうですか」式のキャッチフレーズに思わず心がグラっと揺れてしまう人は少なくない。かく言う筆者も「高級車に買い替え、家を建て、老後の心配も要らないかも……」と一瞬、夢見ていたのだから、他人のことをとやかく言えまいが。

 この手の商法は、まず家族・親戚・知人にビジネスを紹介し、自分と同じような正会員になって熱心に活動してもらうことができるか否かがポイントだ。血縁一族が頻繁に顔をそろえ、頼まれたら断りにくい人情の国・韓国にはピッタリかもしれない。ソウル近郊で行われた集会には1万人の人波が押し寄せたとか。この熱気、しばらく続くのかも。

(U)