IT時代の波に乗るエストニア
地球だより
約10年ぶりにエストニアを再訪した。首都タリンは急速に変貌している。高層のモダンなホテルやオフィスビル、広大なショッピングモールが増えているばかりか、IT(インフォーメーション・テクノロジー)の利用が急速に進んでいる。市内の公共交通機関(バス、路面電車など)は昨年1月から電子チケットが導入されて、プリペイドのスマートカードで乗車料金を支払うようになっている。公衆電話もパーキング・メーターもなくなり、すべては携帯電話で用事を済ませなければならない。ただ、プリペイドのSIMカードを購入すれば外国人でも気軽に携帯電話を利用できる。
他方、物価は10年前に比べて驚くほど高騰している。例えば、パンが1キロ当たりユーロ換算で0・5~1・0ユーロから2・0~3・0ユーロへ3倍以上になり、バスの1回乗車券は0・7ユーロから1・6ユーロへと2倍以上になっていた。ロンドンやパリなどの西欧諸国で生活するのと何ら変わりない価格だ。この変貌ぶりは、2004年に欧州連合(EU)加盟国になった後、11年1月1日にユーロ加盟したことによって加速されたようだ。
高校教師をしている知人のエストニア人によれば、フルタイムの店員など最低賃金の月収は320ユーロ程度で、年金生活者も同様だとのこと。フルタイムの教師の給与は約850ユーロで平均給与に近い額を支給されているが、物価高で生活に余裕はないと言う。
物価水準は西欧諸国並みで給与は西欧諸国の2分の1以下だから、国家レベルでは経済発展しているといっても、多くの一般国民の生活は厳しく、貧富の差が大きくなっている。
(G)