現代版「春香伝」はリアルー韓国から
地球だより
韓国で5月といえば「家庭の月」。筆者がソウルに赴任した頃、常駐する外国特派員たちを家族ごと招待するプレスツアーに参加し、有名な説話「春香伝」の舞台となった南東部の南原に行ったことが今でも印象に残っている。
「春香伝」は妓生の娘で美貌の成春香が両班の息子で高官の李夢龍との、身分の差を超えた愛を実らせる純愛物語だ。古くから伝統的民俗芸能パンソリの題材に用いられ、今も外国に誇れる代表的古典の一つだ。
その「春香伝」を現代風にアレンジした創作オペラ「春香脱獄」が絶賛公演中だという。原作では、春香が自分をわが物にしようとした役人に拷問・投獄されるも、科挙に合格して出世した夢龍が役人の悪事を暴いて春香を助け出すという筋書きだが、オペラでは春香が助けを待たずに自ら脱獄したり、夢龍は公務員試験に何度も落ちて長い浪人生活を送ったり…。強く意外性豊かな女性とさえない男性としてパロディー仕立てで描かれている。
近年、韓国では大学進学率や国家公務員試験の合格率などで女性の躍進が著しい。しかも男児選考の傾向が長かった影響でいまだに人口の男女比では男性が上回っている。その結果、婚活では「負け組」男性が「勝ち組」女性に相手として選んでもらうことを待つという原作の逆バージョンが随所で展開されているのが今の韓国社会だ。
オペラが好評なのは、内容があまりにリアルで共感を覚えずにはいられないからなのかもしれない。
(U)