伝えたい運動部の良さー韓国から
地球だより
知り合いの息子さんが町内の道場で柔道を習っていた。ある程度上達すると、まだ小学生なのに電車を乗り継いで1時間以上かかる柔道の強化校に転校した。見込まれて柔道で飯を食う道が開けたと思ったのか、ご両親は嬉(うれ)しそうにしていた。
ところが、強化校だから他の児童より授業時間が短い。後で聞くと、その男の子はしごかれ過ぎて膝を負傷し、結局、柔道を辞めた。勉強しなかった分、中学校で授業について行けなくなったという。
その子に限らず、韓国で運動を本気でやろうとしたら、勉強中心の正規授業と切り離されてしまう。韓国にも小中学校や高校に運動系の部活がないわけではないが、「特活」(特別活動)という名目で週1、2回ある程度。本格的な地区予選や全国大会を目指す日本の部活とは全く異なる。
高校2、3年にもなれば勉強漬けになり、「特活」の時間まで勉強に当ててしまう教師も少なくない。教育熱心な父兄の顔色もうかがう必要があるのだ。
筆者は余計なお世話と思いつつ、韓国人の父兄に「日本の部活はいいですよ」「文武両道は大事」と話すことがある。運動を通じてこそ学べることは多い。若いエネルギーをぶつけるには運動は格好の手段だ。
だが、大抵は「何を呑気(のんき)なことを言っているのか」という顔をされて終わりだ。勉強の出来不出来が過度に重視される社会の弊害は青少年の自殺の多さなどに現れているが、教育に対する考え方はそう簡単に変えられないのだろう。
(U)