「様」を付けずに大失敗ー韓国から


地球だより

 韓国では「様」という敬称を付けて相手を呼ぶことが実に多い。どこにでもある飲食店の主に向かって客たちは「社長様」と呼ぶし、初対面の相手の肩書が分からない場合、とりあえず「先生様」と呼んだりする。呼ぶ側は相手を尊重するためにそう呼び、呼ばれる側は自尊心を保つことができる。これは人付き合いで上下関係を気にするからというより、互いが気持ちよく社会生活を送るための一種の知恵のようなものに映る。

 だが、筆者のような外国人は注意しなければならないことがある。まだこちらに赴任したての頃、何度か誘われて行った教会で、顔見知りになった教会長に対し「〇〇教会長」と何度も呼んでいたら、相手の顔がだんだん暗くなってしまった。後でその教会長がある韓国人信者に「あの人が私のことを教会長、教会長と呼ぶんですよ」と漏らすのが聞こえた。「教会長様」と呼ぶべきところを「様」を付けずに呼ぶとは失礼だ、と思ったのだ。

 韓国では肩書のすぐ後に「様」を付けて呼ぶのが普通。日本で「様」を付けると逆に仰々しくておかしいが、こちらでは「様」を抜かすと人間関係がぎくしゃくすることになりかねない。さらに「さん」付けは「様」付けより“格下”と見なされるため、使うときは要注意だ。職場で部下が上司に「部長」とか「〇〇さん」と呼ぶのは日本では普通だが、韓国でそれをやったら拳骨(げんこつ)が飛んでくるか、翌月あたり転勤の辞令が下りる羽目になる。

(U)