新型コロナの中の学帽戴冠式


地球だより

 フィンランドでは毎年、メーデーの前日の夕方、高校を卒業した学生たちが集まり、連帯感を高めるメーデーに向けての学帽戴冠式が行われる。学帽のデザインは天井が白、ツバ、校章の回り、あご紐は黒で、メーデーの日は、この白黒の学帽を被った人々が街に繰り出したり、公園などで家族、友人、知人たちと食べて飲んで語らうピクニックを楽しんだりする。

 したがってメーデーの日は、労働者というより学生のイベントといったほうがよい。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大で全ての集会が禁じられている。恒例のヘルシンキのマーケット広場に設置されているハヴィス・アマンダの女性像の頭に大きな学帽を載せる式典も中止。市当局はアマンダ像が見えないように板で囲み、警察官を周辺に配置する念の入れようだった。

 学帽戴冠式の担当は、首都圏の大学の学生自治会が順番ですることになっており、今年は、芸術大学の学生自治会だった。彼らはさすがに芸術大学の学生らしく、戴冠式を単にキャンセルするのではなく、バーチャル・リアリティーでもって開催した。学生、元学生たちがこの戴冠式にネットを通じて参加し楽しんだ。

 コンピューターグラフィックスによりアマンダ像に学帽が載せられると、その瞬間、戴冠式に参加した人々が自らの学帽を被ってそれぞれの場所で祝った。わが家でも息子は学帽を被ったまま一日中プログラムを楽しみながら、学生の連帯感を高揚させていた。

(Y)