新種の快適タクシーが人気
地球だより
こちらのタクシーはお世辞にも快適とはいえない。まずスピードを出し過ぎる。一般道でも空いていれば平気で100キロ出し、ソウル在住が長い筆者もまだ恐怖を覚える。車線変更も頻繁で落ち着いて乗っていられない。極めつけは口が悪いこと。すぐ前の車が道を探しているような様子でゆっくり走っていたら、運転手がクラクションを鳴らしながら「行くのか行かないのかハッキリしろよ!」と吐き捨てるように言った。先日乗ったタクシーでの出来事だ。
こうした韓国タクシーの行儀悪さにはいつも閉口させられてきたが、一方で画期的ともいえる新種のサービスがソウル首都圏に登場し人気だ。ハングルで乗るという意味の「タダ」と書かれた11人乗りワンボックスカーを使ったタクシーで、運転手による快適な接客、清潔で癒される車内空間、乗車拒否をしないマナーの良さなどでシェアを伸ばし、既存のタクシー料金より高めでもリピート率が高い。数年前から始まった携帯アプリを利用した呼び出しもあり、何より罵詈(ばり)雑言を聞かずに済むのが助かる。
しかし、車両を購入し運転手を乗せ、客にレンタルするという営業方法が違法だと批判され、裁判を起こされた上、既存のタクシー業界の反発を受け与党議員が禁止法案を国会に提出する事態に見舞われている。それでも韓国の知人たちに聞くと皆「タダ」の味方だ。かつて経験したことのない快適タクシーに憧れているのだろう。
(U)