タンカー攻撃でイランのプロパガンダに近い「サンモニ」岡本氏臆測
◆革命防衛隊説のフジ
イランの低濃縮ウラン貯蔵量が、核合意の上限を超過すると同国が見通した27日を過ぎた。トランプ米政権の核合意離脱と経済制裁に対抗し、5月にイランが表明していたものだ。緊張高まる両国の橋渡しに白羽の矢を立てられた安倍晋三首相だが、イラン訪問中の13日にホルムズ海峡で日本のタンカーが攻撃される事件が発生。米国とイランの非難合戦は激化し、米無人機撃墜、イラン攻撃「10分前」寸止めの事態になった。
“触らぬ神に祟(たた)りなし”だったのかも知れない。イランの米国大使館占拠に始まったイスラム革命から40年、日本の仲介外交が注目されたところへ、タンカーを攻撃したのは何者か。16日の報道番組のテーマとなっていた。
フジ「日曜報道THE PRIME(ザ・プライム)」は、国際開発センター研究顧問の畑中美樹氏、ジャーナリストの木村太郎氏とも、タンカーを攻撃したのはイラン最高指導者ハメネイ師直属の革命防衛隊だと見ていた。
動機の推測では、「緊張感を高めることによって国際社会に注目され、米国の制裁緩和を引き出したい」(畑中氏)、「あえてやったのは、そうとうイランは制裁に苦しんでいる。こういうこと(船舶攻撃)になるから米国を説得して核合意に戻れということが一つの目的ではないか」(木村氏)というもの。映像を公開し、即座にイランの仕業と非難した米国に近い見方だ。ただ、日本政府は事実確認に慎重な姿勢を取っている。
◆米国の証拠映像疑う
TBS「サンデーモーニング」で突っ込んだ見方を示したのは、立命館大学客員教授、マサチューセッツ工科大学国際研究センターシニアフェローの岡本行夫氏。イラン説は「お客を呼んでいて平手打ちをするのか」と一蹴。革命防衛隊ないしその跳ね上がりという説に対しても無理があると言う。
米国が証拠として示した、タンカーから吸着水雷を外している小型船の映像について、「イランに戻っていれば動かぬ証拠」なのに「米国が撮ったわけだから、港に戻るところまで追跡しないのか」といぶかり、「多分、イランに戻らなかった」と推測する。
その上で、「これをやったのは、イランと米国を戦争させたいどこかの国か機関。しかも、かなり大がかりな力を持っているところ。となると域内には一つか二つしかない」と指摘した。そこはどこかを聞いた司会の関口宏氏の質問には、「これは臆測ですから」とお茶を濁した。
イランのニュースサイト「パース・トゥデイ」(日本語版)17日付は、米国とイスラエルと名指しした。英字紙「ジャパントゥデイ」電子版からの引用で、16日に日本の「外務省高官」が「米国は、最近のタンカー攻撃で使用された専門知識と技術を理由に、この攻撃をイランによるものとしているが、それは間違っている。なぜならこのようなケースでは、アメリカ自身、あるいはイスラエルもまた攻撃者である可能性が浮上する」と述べたと報じた。
◆自ら守れと米大統領
ただ、ジャパン・トゥデイの記事は、そこまでイランの肩を持っていない。(米側が言う)攻撃の高度な専門知識が理由なら、イランと同じように米国やイスラエルも当てはまるじゃないかと「外務省筋」の人物が話したようだ。パース・トゥデイ英語版では共同ニュースから記事が書かれているので、ジャパントゥデイの記事も共同配信によるものだろう。
イランに近い臆測もあり得るだろうが、イランが日本外務省筋として米国とイスラエルに敵愾心(てきがいしん)を込めてプロパガンダにすると、米国、イスラエルを刺激する内容だ。
燃えるタンカーに対し、トランプ大統領は「自国の船舶を自ら防衛すべきだ」とツイート。創始者がユダヤ系のブルームバーグ通信には、安保ただ乗り批判を何度も口にしているトランプ氏の「日米安保条約破棄」発言が記事に出た。偶然だろうか。
(窪田伸雄)