令和時代の暗い未来像を描きながら解決策は何も示さぬ現代と朝日
◆地方の現状を知らず
「これから3年で起きること」という見出しに引かれて週刊現代(5月25日号)を手にした。「昭和・平成時代の常識はもう通用しない」とある。「令和」になったからといって、くっきりと時代が変わるわけではないが、技術革新や高齢化、人口減少など社会構造の変化を目の当たりにすれば、確かに昔の常識は通じなくなっているとの実感はある。
では、これから、しかも「3年」の間にどのような変化が起きるというのだろうか。
同誌は「まずは町の光景が変わっていく。都市近郊が高齢者だらけになる」と予測する。地方ではなく都市近郊が高齢者だらけとはどういうことか。就労人口の減少が原因だ。老朽化した都心のオフィスがマンション、ホテルに建て替わり、地方からの移住者が入って、人口の集約化が進む。そこへ郊外の高齢者が移住して来る、というのだ。
地方都市でも同じく人口集約が進む。確かに、隣家まで車で20分などという環境では電気、水道、福祉サービスを提供するのは非効率で、集約すれば負担は軽くなり、サービスも向上する。
ところが、同誌も同誌にコメントする専門家も、地方都市の現状が分かっていない。人口減少は地方や山間部だけで起こっているのではない。むしろ市街地の中心で“限界集落”現象が起きているのだ。ドーナツ化で取り残された古い商店街は独居老人の街と化しており、祭りや町内行事が成り立たなくなっている。かといって、そこが再開発される見込みはない。街の外縁には新宅と商業施設ができ、子供のいる若夫婦が住むが、街の真ん中はゴーストタウンとなるのだ。地方都市が共通して抱える問題である。
◆「下流老人」が激増も
さて、人口が減れば税の負担が大きくなる。特に社会保障費が急増する。健康保険料が増額される。「数年後には貧しくて自活できない高齢者が急増していきます」と「法政大学経済学部教授の小黒一正氏」は予測する。
所得格差が広がり、二極化が激しくなって、「金融資産がまったくない世帯が増える」。つまり預貯金がない世帯ということだ。
預金ゼロが増えるからというわけではないが、銀行の再編成も不可避となる。人工知能(AI)やスマートフォンの活用でキャッシュレスが進み、「人間が担ってきた多くの業務が消滅する」ためだ。「10年後には約6割の地銀が赤字になる」という。
政府の進める「働き方改革」は「もっと休め」ということだが、年金受給開始年齢が引き上げられ、その結果、定年が65歳や将来的には70歳に延長されれば、「休め」どころか、「もっと働け」となり、「死ぬまで働かなければ生きていけない」社会になるという。
働けない老齢者は生活保護に頼ることになるが財政的に無理な話だ。「35年以降、いわゆる『下流老人』が日本に激増するのではないかと考えています」と「早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二氏」が指摘する。日本社会はどうなってしまうのか。
同誌は「これからの社会の変化を見通して、賢くたくましく生き抜く準備が必要だ」と記事を結んでいるが、これでは何も言っていないのに等しい。
続く記事で「みんなが60歳過ぎても働く社会を考える」を載せた。働き続けられるものの、給料は減り、かつての部下に使われる、特にスキルのない老齢社員として70歳まで働く、これも、厳しい現実を突き付けるだけだ。
◆官民挙げ対策模索を
週刊朝日(5月24日号)も似たような記事を載せている。「本当に怖い令和リスク」だ。超高齢化社会の問題点をまとめており、週刊現代と同じような暗い未来像である。ただ違うのは「バブルの失敗を検証して将来に備えよう」との記事を付けていること。平成の始まりはバブル絶頂期だった。令和のスタートに過去を検証して備えるのはいいが、問題は対案がそうやすやすとは出てこないことで、これも何か解決策を示しているわけではない。
とはいえ、高齢化社会、人口減少社会への対策を官民挙げて模索していくしかないのが現実ではある。
(岩崎 哲)