女性カップル出産も令和時代の「家族」とした「ニュースウォッチ9」

◆養子縁組と同列扱い

 NHKの看板報道番組「ニュースウォッチ9」は令和初日(5月1日)、「新たな“家族のカタチ”」をテーマに特集を組んだ。時代が変われば、家族も変わるというわけだ。

 「広辞苑」によると、家族とは「夫婦の配偶関係や親子・兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」とある。とはいっても、血縁だけが家族を成す条件ではない。

 そこで、番組は血のつながらない三つのケースを紹介した。しかし、問題だったのは、命を慈しみ育てるという家族の本質から決して容認してはいけないカタチまでも視聴者に認知させようと、情報操作を行ったことだ。

 番組が取り上げた三つとは、子育てするレズビアン(女性同性愛者)カップルと、里親あるいは特別養子縁組として血縁関係のない子供を家庭に受け入れている夫婦だ。このうち、女性カップル以外は制度化されて歴史があるものだが、それらをあえて同列に扱うところに、特集の狙いが表れていた。

 キャスターの桑子真帆が女性カップルを紹介した後、「今、虐待や経済的な理由などから、親元で暮らせない子供たちを迎え入れる家族が増えている」と説明したように、里親や特別養子縁組が増えているのは事実。しかし、それは近年に限ったこと。厚生労働省によれば、里親として子供を受け入れている世帯は平成28年で約4000世帯だが、昭和30年は8000世帯を超えており、決して新しい家族のカタチではない。

◆人工授精の方法隠す

 特別養子縁組も同じで、特集は当事者女性の次のようなコメントを放送した。「血のつながらない夫婦の中に、血のつながらない子供ができて、3人が他人なんだけど、支え合って補い合って、一つになっている。家族として」

 つまり、家族とは、血縁関係だけではなく、精神的な結び付きが重要であると強調することによって、同性カップルの子育ても新しい家族の一形態として視聴者に受け入れさせることが番組の狙いだった。取り上げた三つのケースには、同列に並べるには大きな違いがある。その違いを無視し、しかも多くの人が称賛する里親と特別養子縁組を後に持ってくるという印象操作を行ったのも、そのためだった。

 大きな違いとは何か。それを特集は、同性カップルについて、伝えないという形の情報操作を行うことで、視聴者に隠したのである。

 「私が訪ねたのは2人のママと男の子」と、桑子が紹介したのは50代と30代のカップル。2人が出会ったのは7年前で、その後、知人の男性から精子提供を受け、30代の女性が人工授精を2年半繰り返し、妊娠したという。

 ここで疑問が生じる。日本では、結婚している夫婦以外に、病院で人工授精はできない。それでも、妊娠できたというのはどういうことか。そのことに対する説明がまったくなかった。

 学会の決まりを無視して、独身女性に人工授精を行う医師がいるのか。それとも、この欄で以前紹介したことのある、精子を器具を使って自分で体内に入れる“自力妊娠”か。海外で人工授精ということも考えられるが、もしそうならそう説明すればいい。そこに触れなかったのは「新しい家族のカタチ」にできないような問題行為が行われたからではないか、と推測できる。

◆狙いは同性婚の推進

 いずれにしても、第三者の精子を使って命をつくり出した女性カップルを、里親や特別養子縁組として、生まれた命をいとおしみ引き取って育てる夫婦と同列に扱った狙いは、桑子の次の言葉に表れている。

 「(女性カップルと子供は)一つ屋根の下で暮らすが、法律上は家族ではない。日本では同性婚が認められていないからです」。「新しい家族のカタチ」特集は、NHKの同性婚推進キャンペーンの一環だったのだ。(敬称略)

(森田清策)