海洋プラごみ対策、実態つかみ効果的戦略を

インタビューfocus

自民党環境部会長 とかしきなおみ氏

 ウミガメの鼻に刺さったストロー、クジラの腹の中に大量に溜(た)まったビニール袋――近年、こうした衝撃的なニュースやレジ袋有料化などで国民生活に影響を与え、関心が高まる海洋プラスチックごみ問題。自民党環境部会長のとかしきなおみ衆院議員は、使い捨てプラスチック製品の削減努力を地道に行うとともに、海洋プラごみの実態をつかみ効果的な戦略を練るべきだと強調した。(聞き手=政治部・岸元玲七、写真・加藤玲和)

海洋プラスチックごみ問題の現状認識は。

とかしきなおみ氏

1962年、京都市生まれ。昭和大薬学部卒、薬剤師。早稲田大ビジネススクール卒。2005年、衆院議員初当選。厚生労働副大臣、環境副大臣など歴任。現在、自民党環境部会長。当選4回。

 CO2排出量のようなデータが海洋プラスチックに関しては出ていない状況なので、そこから始めないといけない。さまざまな団体が出している数字があるが、それが正しいかも分からない。

 昨年、カナダで開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)での「海洋プラスチック憲章」に日本は署名しなかったが、国によって温度差がある。日本側の意識としては、先進国だけで取り組んでも駄目だという思いもあった。国別のプラごみ流出量(2010年推計)は、1位が中国で、1~4位までをアジア諸国が占めていた。国際会議でこの推計を基に話をしたら、中国が怒っていた。実態がつかめておらず、正しい数字が何か分かっていない状況だ。

日本がこれから取り組むべきことは何か。

 3R(スリーアール)=リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)=を回していくことが大切。リサイクルもエネルギーを使うので、最後の選択肢としてリサイクルがある。まずは使い捨てのプラスチックを減らしていく努力をすべき。何回も使い、循環させ、便利だからといってワンウェイにしないことが大切だ。

環境省が力を入れているレジ袋有料化の取り組みについてどう思うか。

 環境問題が身近になって、他人事(ひとごと)ではなく自分の生活を脅かすということが実感として持てるようになり、時代が変わったと思った。地元の大阪府吹田市北摂地域では、昨年6月からレジ袋の無料配布中止を始めた。そしたら同地域のマイバッグ持参率が44・7%から77・5%まで跳ね上がった。効果があるので、全国一律で実施した方が良い。

 環境政策は地道な積み重ねが重要で、レジ袋一枚くらいと思っても、「ちりも積もれば山となる」のように大きな力になってくる。特にプラスチックに関しては、少しの行動でも効果が出てくるのでぜひ協力してもらいたい。

 私たちのライフスタイルを変えていくことが大切。これからの環境問題は我慢しないようにする。持続可能な社会は、気持ちも持続可能にしないといけない。今までの環境政策は、室内温度を28度にして汗をかき労働生産性を下げながら仕事していたが、温度を下げてもいいと思う。その分、使ったエネルギーを違う所でどうしたらいいかを考え、残業時間を短くした方がエネルギー効率が良くなる。いかに我慢しないで快適に、効率良くするかを常に考えていくことが必要だ。

技術開発で経済成長と両立を

6月下旬に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で何を期待するか。

 問題が集中しているアジアの国々と一緒になって「アジアスタイル」を作り、提案できるようにしたい。各国が納得できるような数値、データを取ろうという提案からされていくだろう。しっかり実態をつかみ、効果的な対策、戦略を練っていかないといけない。日本が持っている技術やノウハウを積極的にアジアの国に提供しようとしている。

 国際会議に行くといつも思うのだが、前の世紀は戦争ばかりしていたが、今世紀はそれどころじゃない。環境問題は国境を超える。みんなで力を合わせて同じイシューに取り組まないといけない。仲良くせざるを得ない、一緒にやらざるを得ない面白いステージに来ている。

環境政策と経済成長の両立のために必要なことは。

 これからは環境問題に真正面からきちんと取り組むことだ。その方が早く技術開発ができる。日本こそさまざまな技術開発をしてほしいと海外の方から言われる。実際に取り組めばチャンスがある。

 大切なのは技術開発で、イノベーションに投資が回るように経済を回す。今回のG20は海洋プラスチック、環境と経済の話がメインテーマになっている。環境と経済をリンクさせ、そこにチャンスを見いだすことが大切だ。

海中で分解されるプラスチックなど新素材普及の課題は。

 コストが掛かるので、消費者が容認してくれるかどうか悩ましいところだ。例えばペットボトル一つ100円だったのが、土に返るプラスチックであれば110円でもいいと思う気持ちになってもらわなくてはいけない。コストを払ってもいいと思える雰囲気をどれだけつくれるかが大事だ。