「令和」に新鮮な光を当て“決定打”を放った読売の中西氏インタビュー
◆「麗しき和」表現する
新元号「令和」をめぐって新聞は百花繚乱(りょうらん)だったが、読売17日付が“決定打”を放った。考案者として有力視される国文学者の中西進氏のインタビュー記事を掲載し、令和に新鮮な光を当てている。
何が新鮮かと言うと、読売がインタビューのエキスを1面で「令和に『十七条の憲法』精神 国文学者・中西進氏『和をもって貴しとせよ』」との見出しで報じるように、世間で注目されている「令」ではなく、「和」をクローズアップしているところだ。
中西氏は「元号の根幹にあるのは文化目標」とした上で、令和の「和」について「和をもって貴しとせよ」の十七条憲法の精神が流れているとし、「令」は善いことを意味し、「令和」とすることで、新元号にふさわしい「麗しき和」が表現されている、と語っている。
読売は中面で1ページを使ってインタビューの詳報を伝えている。聞き手の編集委員、鵜飼哲夫氏は最初に「新元号『令和』への感想はいかがでしたか」と切り出し、素直に考えを引き出そうとしている。中西氏は令の話から始め、「和」はその後に続ける。
新元号について「和をさらに強調すること」としており、令は和を修飾するもので「麗しき和」。あくまでも「和」が元号の核心とインタビューから読み取れる。それを読売はクローズアップさせ、1面の見出しにしたのだろう。
確かにこれはニュースである。令和の「令」の字が元号に用いられるのは初めてだが、「和」の字は、「昭和」などこれまでに19回使われており、「令和」で20回目だ。だから和については当たり前で、批評の対象にならず、ほとんど言及されなかったように思う。令和をめぐる新聞の百花繚乱は、もっぱら令の方だった。だから「麗しき和」は新鮮に響いてくる。
◆朝毎は「令」を標的に
これに対して朝日の10日付文芸欄は「『令和』、ぬぐえぬ違和感 中国思想史専門家が読み解く」、16日付文芸欄は「万葉集、『愛国』利用の歴史 『令和』の典拠 歓迎ムードに警鐘」と、盛んに令和に水を差す。
いずれも東大教授の令和批判で、後者の記事では大伴(おおともの)家持(やかもち)の「海行かば水漬(みづ)く屍(かばね)山行かば草生(む)す屍大君(おほきみ)の辺(へ)にこそ死なめ顧(かへり)みはせじ」に曲を付けた軍国歌謡は大宣伝されたとし、「忠君愛国と万葉集は切っても切れない関係にある」などと憎悪すら滲(にじ)ませる。
一方、毎日は16日付夕刊「特集ワイド」で、「『令和』礼賛一色に疑問」との見出しで、1面から2面へと続く文字通りワイドに令和批判を繰り広げた。そこでも標的にしているのはもっぱら「令」と「海行かば」だった。
朝日は中西氏のインタビュー記事を読売から3日遅れの20日付に掲載したが、二番煎じを免れない。聞き手は編集委員の塩倉裕氏で、「令和が新元号に決まりました。どんな感想を持ちましたか」と、読売同様に感想から入るが、その後は「安倍首相は『美しく』と談話で言っていましたが」などと、ことさら安倍発言を持ち出す。どうやら中西氏に否定させたいらしい。
揚げ句の果てに「万葉集には戦前、国家による戦争動員に利用された歴史もあります。たとえば大伴家持の『海行かば』は曲を付けられ、天皇のために死ぬことを美化する目的で使われました」と、左翼言説の決まり文句で、政治的誘導を試みている。
◆国民は圧倒的に支持》
こんな具合に元号法の制定に反対した左派紙は新元号に難癖を付けている。だが、国民の圧倒的多数は令和を「良い」と祝っている。時事通信社の世論調査では84・8%に上る(4月12日)。また毎日の世論調査では新元号が日本の古典「万葉集」から引用されたことを「評価しない」は5%にすぎなかった(4月15日付)。
どうやら元号は左翼言説を粉砕し、圧倒的勝利を収めたようである。
(増 記代司)