日韓離間を画策する「敵」が誰かを伝えたポストの韓国現地取材記事
◆左派政治集団が主導
敵の正体を見極めなければ、正しい戦いはできない。日韓の間で不幸にも悪感情が際限もなく拡大し続け、本来なら話し合いで解決できる問題が収拾不能になってしまっている。誰も望んでいないし、誰にとっても利益にならない。
「対立は政治的なもので、民間では交流が進んでいる」というが、「三・一運動」100年記念の日に日本旅行の動画をアップしたというだけで、激しいバッシングを受け、謝罪を繰り返す羽目になった韓国人の女性ユーチューバーもいる。ユーチューバーとはインターネットの動画サイトYou Tubeに動画を上げて、閲覧数で金を稼ぐ仕事(と言っていいのか?)で、今、若者が一番なりたい職業だ。
ともかく「民間では関係は悪くない」というのは現実無視、逃避、慰めの類いで、日韓のお互いへの感情は最悪だ。この状況を誰が何の意図でつくったのか。その「敵」を知らなければならない。
週刊ポスト(3月15日号)でジャーナリストの赤石晋一郎氏が「賠償金を横領した文在寅政権を我々が訴える理由」を書いている。韓国現地取材で誰が何を騒いでいるのか、焚(た)き付けているのかを整理して見せてくれる記事だ。
現在、激しく日本を攻撃している団体は、そもそも「被害者」を代弁した組織ではない。朝鮮人戦時労働者(いわゆる「徴用工」)では「民族問題研究所」という組織が、「慰安婦」では「挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)」(現・日本軍性奴隷制問題解決の為の正義記憶連帯)が運動を引っ張っている。いずれも「市民団体」を名乗りながら、その実、左派政治集団だ。韓国では彼らを「運動圏」とか「主思派」と呼ぶ。運動圏とは主に1980年代学生運動を率いた中核メンバーを指し、主思派とは北朝鮮の「主体思想」に傾倒し北に従う「従北派」の核心勢力のことを言う。
「被害者」組織は彼らが主導しており、自らの政治目的のために彼らを利用し、かえって傷口を広げ、併せて反日を煽(あお)って、いわば日韓離間を画策しているのだ。
◆政府を訴えた遺族会
では本来の「被害者」はどこにいるのか。赤石氏は“まともな被害者”を取材した。「アジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会の崔容相事務局長」である。同遺族会は昨年12月、韓国政府を訴えた。「徴用工被害者と遺族を原告として、韓国政府を相手取り1人あたり1億ウォン(約1000万円)の補償金を求める訴訟をソウル中央地裁に起こした」のだ。
その理由を崔事務局長は、「韓国政府は韓日条約に基づいて日本からお金を受け取っています。韓国政府はその受け取った資金を(戦争)被害者に渡さなかった」この「状況を“正す”ことが必要だ」と説明する。
1965年の日韓基本条約、請求権協定で日本は韓国に「無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(当時のレートで約1800億円)」を提供した。韓国政府はこの中から労働者たちに賠償しなければならなかった。日韓交渉で「賠償については日本側が行なうという申し出について、韓国政府は『自国民の問題だから韓国政府で行なう』と返答」していた。ところが賠償金は渡されず、経済発展のために使われたのである。
文大統領の“師匠”である盧武鉉政権の時、文氏も大統領秘書室長(官房長官に相当)として、請求権協定を精査し、交渉の経緯と補償未済の状況を明らかにして、一部の賠償金を支払う作業に直接携わっている。文氏は十分事情を知っているのに頬被(ほおかぶ)りだ。
◆対応すべき韓国政府
「被害者」が左派に利用され、本来の「被害者」は運動からも政府からも置き去りにされている。崔事務局長は、だから日本政府は左派団体ではなく、本物の「被害者」と向き合ってほしいと訴える。しかし、これは違う。被害者と向き合うべきは韓国政府だ。日本の申し出を断ってまで自ら行うとしたのは韓国政府なのだし、請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」わけだから。その点では韓国人の右も左も間違った認識をしているのは否めない。
韓国の誰が補償されるべき人たちで、誰が便乗して政治目的に利用しているのか、つまり「敵」は誰かを伝えた良い記事だが、「敵」の最終目的が何なのかも追及してほしかった。
(岩崎 哲)