代案なき安倍批判に終始し労組報道で産経の独壇場を許す朝日・毎日

◆脅しにスト使う労組

 1カ月前のニュースと言えば、新聞でなく旧聞かもしれないが、ちょっと気になる記事があった。産経10月2日付に「JR東労組 専従7割減 3万人超え脱退 スト推進、東京ゼロに」との見出しで掲載された労組をめぐる報道記事だ。

 それによると、JR東日本の最大労働組合「東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)」が今年2月、組合員の一律定額のベースアップなどを要求し、会社側にスト権行使を予告。会社側は「(信頼の)基盤が失われた」として、労使協調を掲げた「労使共同宣言」の失効を通知した。

 その後の約3カ月間にJR東労組に所属する4万7000人いた組合員のうち約7割の3万人以上が脱退。会社との労働協約によって組合員数に応じて定められる組合専従者数は106人から26人に大幅減少したという。

 既に産経は今年3月16日付に「崩れたスト計画 大量脱退『信頼を無に帰す行為』」とJR東労組の動きを大きく報じていた。その続報が10月の記事だが、こういう労組記事はなぜか、他紙にはほとんど載らない。

 それほどニュース性がないのかというと、そんなことはあるまい。仮にJRがストで動かなくなれば、どれほどの人が影響を受けるか計り知れない。2020年の東京五輪輸送でのストも視野に入れていたとの話があるから、国民を人質に取る一種のテロと言ってもよい。

 ストを労使交渉の脅しに使うJR東労組とは何者なのか。同労組の系譜は国鉄時代の「鬼の動労」にさかのぼるという。1975年には「スト権スト」と称する政治ストで1週間以上も列車を止まらせ、全国で実に2200万人以上に影響を与えた。それを契機に国鉄は民営化され、現在のJRになったことは周知の事実だろう。

◆枝野氏と深い関わり

 産経によれば、政府は同労組について「極左暴力集団」とされる日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)の活動家が「影響力を行使し得る立場に相当浸透している」との認識を国会答弁や刊行物でたびたび示し、今年2月にも同趣旨の答弁書を閣議決定している(同3月16日付)。

 このJR東労組と深い関係があるとかねてから指摘されてきたのが立憲民主党の枝野幸男代表だ。同労組とその上部組織のJR総連から2006年から09年までの4年間に計404万円の献金を受けていると報じられた。

 また10年の参院選で民主党(当時)はJR総連の組織内候補として田城郁氏を担ぎ出して当選させた。田城氏は16年の参院選で落選したが、今年のJR総連第34回定期大会で執行副委員長に選出されている。筋金入りの労組活動家だったわけだ。過激スト路線の首謀者なのだろうか。

 枝野氏がJR東労組のスト計画を承知していたのか、疑問が残る。9月の立憲民主党の大会で枝野氏は「野党第1党として政権の選択肢となり、遠からず政権を担う。野党第1党の党首である私が『ポスト安倍』だ」と豪語した。それならば、朝日や毎日は「安倍一強」批判にうつつを抜かしていないで、枝野氏と立憲民主党が「次期政権」を担い得るのか、検証すべきだ。

◆支持率上がらぬ野党

 朝日の世論調査によれば、自民党の支持率37%に対して立憲民主党は6%、国民民主党はわずか1%で、旧民主党系は両党合わせても自民党の2割程度にすぎない(10月16日付)。どうやら支持基盤の労組の組合員にも愛想をつかされているようだ。

 事実、電機メーカーの労働組合が加盟する電機連合が今年7月の定期大会で公表したアンケートによると、昨年10月の衆院選で組合員の投票先は比例代表、小選挙区とも自民党がトップだった。比例代表は自民党が36・7%で最も多く、旧希望の党23・7%、立憲民主党21・9%と続いた。小選挙区は自民が41・5%で、旧希望(24・9%)と立憲(13・6%)を大きく上回ったという(毎日7月13日付)。

 なぜ野党の支持率が上がらないのか。それは朝日や毎日にも言えることだが、代案なき安倍批判に終始しているからではなかろうか。労組報道も産経の独壇場を許しているようでは両紙にも明日はなさそうだ。

(増 記代司)