金永南氏が漏らした本音

韓国与党に「保守打破」提唱

 仲間同士ではつい本音が出てしまうものだ。内輪の話となるからだ。北朝鮮の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長が漏らした一言は、北朝鮮の本音と、韓国の誰が“仲間”なのかを図らずも暴露してしまった。「月刊朝鮮」10月号(電子版)が伝えている。

 金永南委員長は10月5日、平壌人民文化宮殿休憩室で、南側訪問団(与党共に民主党議員ら)と面会、「統一偉業成就に南側の同胞も力を合わせて、保守打破運動に…」と発言したのだ。

 日ごろ、労働新聞などのメディアで南の保守陣営を口汚く罵(ののし)っている北朝鮮としては、何の違和感もなく口にした言葉だったろうが、これを伝え聞いた南の保守系の人々は北朝鮮と韓国内左派がいかに“同志的”結合を保っているのかを思い知った。

 「統一偉業」とは主に北朝鮮で使われる言葉で、北朝鮮の解釈によれば、北主導で南北を統一することである。そのために南の「同胞」も力を合わせていこう、との呼び掛けは、北主導統一に協力せよということである。だから、そのためには「保守打破」していかなければならないと最高人民会議(国会に相当)のトップにして、北権力ナンバー2の金永南氏が“参勤”してきた南の左派に下賜した“お言葉”ととれる。

 同誌の辛勝民記者は、「表面では平和な自主統一、民族統一を追求すると言いながら、一方では反対側を圧殺しようとする敵意を示した」と憤りを隠さない。

 与党や政権内には任(イム)鍾晳(ジョンソク)大統領秘書室長(官房長官に相当)をはじめとして、左派学生運動出身者が半分を占めている。任室長は国家保安法違反で逮捕、収監された人物だ。

 左派学生運動出身者の中には秘密裡(り)に北へ渡って工作訓練を受けて戻り、国会議員にまでなった人物もおり、いわば北の工作員が政府だけでなく社会の各層に浸透している。北朝鮮が彼らを南派工作員と見たとしても当然の話なのだ。この金永南発言が大きな問題にならないというのも、韓国の左傾化した現状をよく伝えている。

 編集委員 岩崎 哲