米中首脳会談、北の核放棄が対話の前提だ
アジア歴訪中のトランプ米大統領は、8日から10日まで中国に滞在し、習近平国家主席による異例の接遇を受けながら9日に米中首脳会談が行われた。北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる外交は、圧力の強化を主張するトランプ氏と対話を唱える習氏と双方が従来の立場を述べるさや当てだったが、核放棄に向けた対話を北朝鮮から引き出すまで圧力を加えるべきだ。
豪華接待で批判封じる
中国共産党大会で党総書記2期目に独裁的な体制を築いた習氏は、明・清朝時代の皇宮だった故宮(紫禁城)博物院で、国際政治の頂点にある米大統領を「国賓を超える待遇」で迎えた。中国政府成立以来、皇帝のような比類なき権勢を演じる狙いがあったと言えよう。
また、核・ミサイル開発をあからさまにした北朝鮮の威嚇に対して、米軍が強力な布陣を敷いて日韓など同盟国と共に朝鮮半島や周辺海域で軍事演習を繰り返し、中国にも経済圧力の強化を求めてきた。さらにトランプ氏は、大統領選中から中国との貿易不均衡を激しく批判してきた。習氏は、壮大で豪勢な接待でトランプ氏の批判や要求を和らげた。
このような習氏の大仕掛けには、用心が必要だ。習氏は反腐敗闘争により政敵を追放する一石二鳥を果たしたが、トランプ氏接遇ぶりに専制君主に似た強い支配力が表れており、2500億㌦もの貿易契約・投資協定を土産とした。
一方で、体制批判を許さない言論統制、人権派弁護士、民主活動家の逮捕、少数民族の運動への弾圧を強化し、ノーベル平和賞受賞者の人権活動家、劉暁波氏を投獄し、がんを海外で治療する許可を与えずに死に至らしめている。トランプ氏は習氏によって批判の口を封じられたことは否めず、課題を残した。
北朝鮮問題への対応では、首脳会談後の共同記者会見で、北朝鮮に核放棄、朝鮮半島の非核化、北朝鮮に関する国連安保理決議の徹底では米中は一致している。これまで米国は中国に、北朝鮮への石油禁輸、中国国内で働く北朝鮮労働者の退去など、さらに強硬な措置を取ることを要求してきた。
9月の北朝鮮の核実験を受けた国連安保理による全会一致の制裁決議では、北朝鮮への石油精製品の輸出を3割削減、北朝鮮繊維製品の輸入禁止、北朝鮮の海外派遣労働者の契約更新禁止がなされた。安保理の決議を履行するのは安保理常任理事国の義務だが、中国の抜け穴が効果を弱めかねない。遼寧省丹東市をはじめ北朝鮮の闇経済の拠点を、取り締まる必要がある。
が、習氏は「太平洋は十分に広く、中米両国を受け入れられる」とトランプ氏に伝えたといい、オバマ前米政権に拒否された「新大国関係(G2)」を認めさせるつもりだ。南シナ海問題など中国の海洋進出は、断固として容認してはならない。北朝鮮問題とは切り離すべきだ。
二者択一の状況つくれ
いずれ、北朝鮮に「過去のアプローチを繰り返さない」と合意したことにより、核放棄まで圧力を加え、応じなければ孤立して消耗という二者択一の状況をつくることが対話の前提だ。