辺野古移設、日米合意の原点を訴える

沖縄県議会野党の自民会派12人、米国を訪問

 沖縄県議会野党の自民会派の12人は10日から7日間の日程で米国を訪問している。速やかな在沖米軍再編や負担軽減を米政府・議会関係者らに訴えるのが目的で、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市の辺野古沖への移設に反対する翁長雄志知事や革新団体とは一線を画し、沖縄を取り巻く安全保障環境を確認し合った上で、実効性のある基地負担軽減を求めていく。(那覇支局・豊田 剛)

ワシントン沖縄事務所も視察

前所長のビザ問題で後任の活動を確認へ

辺野古移設、日米合意の原点を訴える

訪米視察を前に記者会見する県議会自民会派の照屋守之・自民党県連会長(右)、中川京貴・同幹事長(右から2人目)ら=8日、沖縄県議会

 訪米団は、ニューヨークの国連本部を視察後、ワシントン入りし、米政府、議会、シンクタンク、さらには、日本大使館などを訪問する計画だ。

 訪米団長を務める中川京貴幹事長によると、自民会派として訪米視察するのは初めだ。県選出の國場幸之助、宮﨑政久両衆院議員、内閣府の島尻安伊子大臣補佐官、外務省沖縄事務所の又吉進氏も同行している。又吉氏は特に、仲井真県政で基地問題を担当した知事公室長時代、ワシントンを訪問し、多くの人脈を持っていることから、橋渡し役として期待されている。

 ワシントンでは米海兵隊トップのロバート・ネラー総司令官、国務省のジュリー・チャン日本部長、国防総省のポール・ボスティー日本部長代行との面談が予定されている。複数の米議会議員にも面談を申し入れている。

 中川氏は8日、記者会見で、「辺野古移設に反対する知事などの『オール沖縄』と異なり、普天間飛行場の早期返還を訴え沖縄全体の負担軽減を訴える、現実的で実効性にある訪米だ」と強調した。辺野古移設については、「推進」するのではなく、日米合意の原点である普天間飛行場の危険性除去と早期返還・移設を訴える考えを強調した。

 照屋守之自民県連会長は「日米安保を受け入れる立場から、米軍機事故をめぐる日米両政府、県の連絡協議会設置を提案したい」と同記者会見で述べた。「真摯(しんし)な対応が問題解決につながると理解している」と期待を示した。

辺野古移設、日米合意の原点を訴える

翁長知事を支える「県民大会」ではオール沖縄訪米団を構成する革新系県議らも登壇した=8月12日、那覇市の奥武山陸上競技場

 訪米中は、トランプ新政権の在日基地政策、沖縄に対する認識について、さらには、沖縄周辺の安全保障環境についての認識を確認する。日米同盟の課題と現状、沖縄の基地負担軽減についての考えを問いただす。

 一方、県政与党側は、翁長氏を支える「オール沖縄会議」が先月、ワシントンを訪米し、辺野古移設断念を訴えたばかりだ。伊波洋一、糸数慶子両参院議員を筆頭に革新県議、革新系市民団体、労組幹部ら21人が訪問したが、面会できたのは反軍反基地の考えを共有する個人・団体にとどまった。

 自民党県議団による訪米視察のもう一つの大きな目的は、沖縄県のワシントン事務所の視察だ。

 ワシントン事務所は、翁長知事が2014年の知事選で設置を公約に掲げ、15年4月に開所した。辺野古移設阻止の他、沖縄の情報発信、情報収集活動が主な目的としているが、自民会派は費用対効果を疑問視している。一つは予算の使い道だ。15年度の年間活動費は約7900万円、16年度は約7400万円計上しているが、そのうち9割近くが米国コンサルタント会社に委託料として支払われていたことが議会の答弁で分かっている。また、リベラル系シンクタンク「新外交イニシアティブ」(猿田佐世事務局長)が翁長知事の“手足”としてロビー活動を展開している。

 ただ、昨年1月から6月まで、ワシントン事務所で面会できた日数はわずか22日。多くは民間の研究所の所員で、政府関係者は3人にすぎない。翁長氏は知事に就任して以来、15年5月、16年5月、17年2月の3回ワシントンを訪問しているが、いずれの訪問でも、国防や外交で力のある高官らとの面会は実現しなかった。

 さらに、初代所長の平安山英雄氏は、就労に必要なビザを取得しておらず、B1と呼ばれる短期滞在の商用ビザで滞在していたことも分かっている。ロビー活動をするには就労ビザと外国代理人登録法資格(FARA)が必要だ。そのため、自民会派は、ワシントン事務所の活動は合法的ではないと、所長の召還を求めていた。

 こうしたこともあり、平安山氏は早期退職を希望。4月1日からは後任として知事公室参事兼基地対策課長を務めた運天修氏が務めている。自民会派は、運天所長の就労状況についても確認する意向だ。