小池知事の北朝鮮系団体主催追悼式への文書送付見送りを批判する朝日
◆根拠薄い「六千余名」
防災の日が9月1日なのは、関東大震災の発生の日に由来する。それから94年、東京都墨田区にある都立横網町公園の都慰霊堂で大法要が営まれた。防災訓練とともに定番の行事だが、新聞ではあまり報じられず、テレビでは地方ニュースで扱われることが多い。
ところが、今年はちょっと違った。2日付の朝日社会面トップに「朝鮮人犠牲、語らぬ小池氏 関東大震災『歴史家がひもとくもの』 虐殺、有無明言せず」との見出しが並び、産経社会面トップには「朝鮮人追悼式 小池都知事、文書取りやめ 『虐殺』めぐり対立」とある。大法要ではなく、朝鮮人犠牲者追悼集会をめぐる記事が大きく扱われていた。
この日、横網町公園で6000人が虐殺されたとする朝鮮人犠牲者追悼式と、その数字に異議を唱える団体の集会が開かれ、小競り合いとなった。朝日は明らかに追悼式側に肩入れしている。
ことの発端は、小池百合子都知事が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を断ったことだ。断った理由は大法要に知事は出席し、亡くなった人すべてに哀悼の意を表しているためとしている。
同公園の朝鮮人犠牲者追悼碑に「あやまった策動と流言蜚語(ひご)のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われた」と刻まれており、今年3月の都議会一般質問で、六千余名という数を「根拠が希薄」と指摘され、小池知事は「適切に検討する」と答弁していた。その結論が追悼文見送りだった。
◆出所は韓国臨時政府
これを受けて毎日は31日付社説で「歴史の修正と見られぬか」と噛(か)みついた。追悼碑の「六千余名」は震災直後に朝鮮人調査団が調べた数字が根拠で、内閣府の中央防災会議の報告書は虐殺人数を震災死者数10万5000人の「1~数%」と推計しており、虐殺が1000人単位なのは国も認めているとして「都知事があいさつ文を出す機会は多い。なのになぜ、この件に限って見送ることを決めたのか」と追及している。
だが、本当に「六千余名」に根拠があるのか。中央防災会議の報告書について最も詳しく書いたのは産経だ(2日付)。
それによると、報告書は朝鮮人犠牲者に関する記録として司法省(当時)が作成した資料にある233人を提示、朝鮮総督府が把握した震災による朝鮮人の死者・行方不明者832人という数字のほか、大韓民国臨時政府の機関誌「独立新聞」に掲載され、後に研究者らに多く引用された6661人などの数字を取り上げているとしている。
とすれば、「六千余名」の出所は大韓民国臨時政府の機関誌だったことになる。臨時政府といっても数十人規模で、当時、上海に拠点を置いており、日本国内での調査能力があったか、大いに疑問だ。虐殺者数につい都側は「六千余名が正しいのか、正しくないのか特定できないというのが都の立場」としている。「六千余名」に疑問を抱くのは当然のことだ。
◆革新都政が建てた碑
それよりも追悼文を見送った理由は、追悼碑と主催団体の怪しさにあるのではないか。追悼碑は1973年に建てられたが、これは美濃部革新都知事の後ろ盾による。美濃部知事は68年、朝鮮大学校を認可し、それを手土産に71年に訪朝、金日成主席と会見し北朝鮮を絶賛して日朝友好を誓った。その証しの一つが追悼碑だった。
追悼式の主催団体について朝日は「市民団体の日朝協会」と書くが、日朝協会は果たして「市民団体」だろうか。同協会は朝鮮戦争の最中の51年、北朝鮮系の在日組織「民戦」(在日朝鮮統一民主戦線)の全面的支援を受けて結成され、常に北朝鮮の意向に従って活動してきた、いわく付きの団体だ。
北朝鮮の弾道ミサイルが日本の上空を飛び越え、そして核実験の強行だ。そんな時に北朝鮮系団体にのうのうと追悼文を送る都知事がいるだろうか。朝日1日付社説は「リーダーとしての適格性が疑われる行い」と小池批判を展開するが、北朝鮮を擁護するのもほどほどにしてもらいたい。
(増 記代司)