与党政治家への感情的な反発心をあおることに執着する文春・新潮

◆「選挙妨害」との声も

 このところ、週刊誌は政治の話題で騒がしい。下村博文元文科相の「闇献金」を週刊文春(7月6日号)が報じれば、週刊新潮(7月6日号)は金子恵美代議士の「公用車で保育園」送迎を報じている。“権力の不正を暴く”のは報道の役割でもあるが、“疑惑”段階のものや、法や規則的には問題ないことを伝えて、感情的な反発心をあおるとなると、「権力の不正追及」とは違うんじゃないかと思わざるを得ない。

 下村氏は言うまでもなく、投票を間近に控えた東京都議選で自民党の司令塔を果たしているキーパーソンだ。その人の“スキャンダル”報道は一人下村氏だけでなく、自民党都議候補全体がダメージを受ける。小池百合子都知事率いる都民ファーストの会と競っている最中での“疑惑”報道は、どうみても、都民ファースト側を利することになるのは子供でも分かることだ。

 そうでなくとも、豊田真由子代議士の秘書への「パワハラ、暴力」が週刊新潮によって報じられ、「加計よりも票を減らす」と自民党幹部が頭を抱えているところに、司令官への直撃弾が撃ち込まれたのだから、「選挙妨害だ」と色めき立つのも無理はない。

 文春の報道は下村事務所の「内部文書」を基に、加計学園によるパーティー券購入が収支報告書に記載されておらず、「闇献金」だというものだ。内部文書の「入金状況」では下村氏が文科相に就いた後の2013年と14年に「加計学園から百万円」の入金があったと記されているという。政治資金規正法では20万円を超えるパーティー券購入を受けた場合、収支報告書に記載しなくてはならないが、これがないというのだ。

◆即座に会見開き反論

 下村氏側は即座に記者会見を開き、「事実無根」と反論した。「加計学園の秘書室長が事務所を来訪され、個人および企業あわせて11名から預かってきた合計100万円の現金を持参したので、その11名の領収書を作成し渡した。平成26年も同様」と事情を説明した。

 これだと1人当たりの購入額は20万円を下回る計算となり、収支報告書に記載がなくても問題はない。下村氏は、同誌は日報を入手しているようだが、それを「確認すれば、『加計学園がパーティー券を購入したわけではない』ことは理解できるはずであります」と述べている。文春はどう反論するのだろうか。

 週刊新潮が報じた金子恵美議員の“公用車で私的送迎”を見てみよう。金子氏は昨年8月に総務政務官に抜擢(ばってき)された。大臣、次官に次ぐポストで公用車があてがわれる。公務で使う運転士付きの車だ。

 現在、金子氏は港区赤坂の議員宿舎を出て、国会議員会館内にある「『キッズスクウェア永田町』という東京都の認証保育園」に1歳4カ月の長男を預け、総務省に登庁している。これが「公私混同」だというのだ。また、母親を東京駅に送る際にも公用車を使ったと報じている。

◆見解の相違追及せず

 同誌は金子氏に見解を質(ただ)した。「公私混同しないようにしていますけどね。いつも同行している総務省の秘書官さんもそれはすごく意識していて、ここは(公用車を使っては)ダメですと仰(おっしゃ)います。確かに母も公用車で送りました。秘書官さんから『どうぞ』と言われたんです」との答えだ。公用車使用には慎重を期していることが分かる。

 ところが、総務省「会計課管理係の担当者」は、「そんなことあり得ないですよ」と全否定。ならば、秘書官と担当者の見解がどうして違うのかを同誌は追及すべきだが、していない。別の報道では登庁ルート上での送迎は問題ないと総務省が示しているようだが、同誌はそれには触れておらず、結局、悪印象だけを残した。

 週刊誌は例え真相が見えていなくても“疑惑”段階で書くことが多い。これを“問題提起”だと言えば言えようが、提起だけして、その後、結論が出てもフォローせず、言いっ放しだ。下村氏の献金については続報もあり得るだろうが、金子氏の公用車使用についてはこれまでだろう。火を付けておいて、あとは見向きもしないのであれば、付けられた方はたまったものではない。

 最近、報じられる側がホームページやブログで即座に反論、釈明するケースが目立っている。週刊誌にとってもいい緊張関係になるのではないか。

(岩崎 哲)