都議選を「安倍政権への審判」にすり替え偏向の馬脚あらわした朝日

◆都政への審判のはず

 「安倍1強 首都の審判」。こんな大見出しが朝日24日付の1面トップを飾った。あれれ? 東京都議選って、安倍政権への審判だっけ。思わず、そう問いたくなった。小池都政の審判のはずの都議選がいつの間にか、安倍政権の審判にすり替わっている。

 その理由を朝日はこう言う。

 「学校法人『加計(かけ)学園』を巡る問題などで安倍政権に逆風が吹く中での首都決戦となり、今後の国政を占う意味合いが強まっている。小池氏側が全面対決する自民党が都議会第1党を保てるかが焦点で、結果次第では安倍晋三首相の政権運営を左右する可能性もある」

 確かにそれもあるだろう。都議選は「地方選とはいえ、1000万人を超す首都の有権者の民意は過去にも国政選挙の先行指標となってきた」(毎日24日付社説)。例えば、09年は民主党が初の都議会第1党に躍進し、その直後の総選挙で政権交代。前回13年は自民党が安倍内閣の高い支持率を背景に初めて全員当選(59議席)を果たし、参院選にも圧勝した。

 とはいえ、今回は国政選挙を控えていない。自民党が都議会第1党を保てるかが焦点になるのは、結果次第で小池都政の行方を左右するからだ。それをことさら、「安倍1強」への審判とするのは朝日の勝手な決めつけだ。

◆安倍政権と対決せず

 そのことはちょっと考えればすぐにも分かることだ。そもそも小池氏と「安倍1強」には二つの“ねじれ”がある。第一に、小池氏は少なからず自民党支持層に支えられてきた。昨年7月の都知事選では自民党支持層の55%が小池氏に投票し、自民党推薦の増田寛也氏は36%にとどまった(読売出口調査)。

 もともと小池氏自身は自民党の衆院議員だった。離党したのは6月初めのことだ。安倍首相と小池氏は東京五輪の成功を共通目標にしている。それで安倍首相は小池批判を控え、小池氏も安倍批判を語らない。自民党都連とは対決構図にあるが、安倍政権とはそうではない。

 朝日の世論調査(6月3、4日実施)によると、小池都知事の支持率は70%と高いが、小池知事が率いる「都民ファーストの会」に投票するとの回答は27%で、自民党の27%と拮抗している。「都民ファースト」支持者の中には都政は小池、国政は安倍と考える人もいるだろう。自民党が負けてもイコール安倍批判とは限らない。

 第二に、「安倍1強」の一翼を担う公明党が小池氏とタッグを組んでおり、都議選では最初から「安倍1強」の構図が崩れている。日本維新の会副代表だった渡辺喜美氏が同党を離党し、小池氏と新党で国政を目指すとの見方もあるが、渡辺氏は「親安倍、親小池の位置で、東京・大阪改革大連合を作るべき」と主張している。仮に「都民ファースト」が国政に進出しても反安倍にならない公算が大だ。

 つまり小池与党(都民ファーストと公明党)が勝利すれば、「安倍1強」の中で、公明党と小池氏の発言力が強まるだけの話だ。自民党が負けても「安倍1強」は崩壊しない。それを朝日は「安倍1強 首都の審判」との大仰な見出しで、あたかも安倍政権への審判のように煽(あお)る。他紙も安倍政権への影響を書くが、ここまで決めつけてはいない。

◆「角度」をつけた報道

 朝日はどう見ても恣意(しい)的な紙面作りをやっている。記事はどうやら政治部記者が書き、それを編集当事者たちが「角度」をつけたに違いない。「角度」というのは、外交評論家の岡本行夫氏から教えられた話だ。

 朝日は慰安婦や原発事故報道での捏造(ねつぞう)で謝罪・訂正を余儀なくされたが、これを検証する朝日の第三者委員会の委員だった岡本氏は、同委のヒヤリングで何人もの朝日社員から「角度をつける」という言葉を聞いたそうだ(朝日14年12月23日付)。

 角度とは物事をみる観点を言う。それを「真実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」として、朝日の方向性に沿うように「角度」をつけて報じていた。まるで読者に下げ渡すかのように、だ。

 これでは読者は朝日の色メガネでしか世間が見えなくなる。都議選報道で偏向の馬脚を現したようだ。

(増 記代司)