「多様な性」小学校から教えてと「洗脳」後押しする朝日の教育記事

◆評価できる通達撤回

 米国のトランプ政権が2月22日、心と体の性が一致しない児童・生徒(トランスジェンダー)が自分の希望する性別のトイレや更衣室などを使用させるよう全米の公立学校に出したオバマ前政権の通達を撤回した。

 オバマ氏は「性的少数者」(LGBT)の権利拡大に熱心で、通達もその一環だった。しかし、誰もが平等とはいえ、体が異性の児童・生徒が女子トイレに入ってきたら、普通の女の子は困惑するだろう。ましてや更衣室となると、さらに混乱する。このため、保守派が反発し、実際10州以上で訴訟に発展した。

 学校教育ではトランスジェンダーへの配慮だけでなく、その他の児童・生徒のプライバシーも守る必要がある。だから、性的少数者への対応は熟慮が必要で、全米一律の対応を強制したのは乱暴過ぎる。トランプ政権の通達撤回は極めて良識的な判断だと言える。

 通達撤回については、各紙が2月23日夕刊、及び24日朝刊で、事実関係を中心に報道した。本紙は24日付で、ワシントンの早川俊行特派員が事実関係に加えて「オバマ政権の不法な行き過ぎを正した」という、ヘリテージ財団上級研究員の撤回を評価する意見を紹介した。

◆「反トランプ」一色に

 一方、続報で通達撤回に抗議する集会を報道したのは「朝日新聞」(2月26日付)。その中で、「トイレに違和感なく入れなければ学業を続けられなくなる」という高校生の声を伝えたが、それなら、前政権の通達が出る前は、どんな学校生活を送っていたのか。記事はそこには触れないばかりか、通達撤回支持者の声も伝えず、「トランスジェンダーの子どもたち(の権利)が攻撃される」と、「反トランプ」一色だった。

 学校教育における性的少数者への対応は、一般の児童・生徒の人権、そして保護者の教育権も踏まえて、総合的に判断すべきものだ。また、一口に性的少数者と言っても、そっとしておいてほしいという人もいるから、対応は人それぞれに考えるのが肝要。だから、この問題は難しいのだが、朝日が視野狭窄(きょうさく)になって、少数者の権利拡大にばかりに目が向いていることを示したのが3月10日付「教育」面に掲載した記事「多様な性 小中学校から教えて」。

 この記事は、学習指導要領の改定案の中に、「思春期になると異性への関心が芽生える」(小中学校の体育)と記述されたことを受けて書かれたものだ。そして、この記述では同性に恋心を抱く児童・生徒は「自分は間違っている」と思って傷付く。だから、義務教育の段階から「多様な性」について教えてほしい、という当事者たちの声を紹介する形を取っている。

 記事の中では、「LGBTについて小中学校段階でうかつに教えると、(当事者の生徒が)いじめにあう恐れがある。先生が教えられるのかという問題もあり、難しい」と言う、スポーツ庁の担当者のコメントも載せているが、小さな子供に性的少数者について教えることの課題としては浅く不十分だ。

◆大人でも理解が困難

 新年度から使用される高校家庭科の教科書には、LGBTや「性指向」という言葉が登場する。性指向とは異性・同性のどちらを好きになるかを意味し、異性に向けば「異性愛者」、同性に向けば「同性愛者」になる。性的少数者とは同性愛者や、男女両方を好きになる「両性愛者」などを指すが、これを小学生に教えても理解できるのか。大人でも混乱するのだから、それを子供に教えることはむしろ「洗脳」と言った方がいいだろう。

 スポーツ庁の担当者が言ったように、性指向を説明できる教師はどれほどいるのか。その上、同性間の性行為を禁じる宗教を信じる保護者の教育権を侵害しないで、性的少数者を子供に教えることは可能なのか。これほど難しい課題を無視して、小学校から「多様な性」を教えることを後押した朝日の記事は短慮を超えて、子供の洗脳の後押しというべきだろう。

(森田清策)