「実力組織にしか担えない任務がある」と駆けつけ警護を肯定の毎日

◆国連の課題を論じる

 「60年前の12月18日、日本は国連への加盟を果たしました。その日に日本国民が感じた大きな喜びと感謝に、改めて思いをはせたいと思います」

 「日本は現在、加盟国中最多の11回目の安保理非常任理事国を務めています。これは日本の貢献への高い評価とともに、強い期待の表れと思います。国際情勢が目まぐるしく変化する中、国連は日本が国際社会と連携しながら様々な課題に対応するための大切なプラットフォームです。日本は国際協調主義に基づく、積極的平和主義を高く掲げ、PKОや人間の安全保障などの分野で、これまで以上に積極的に貢献していく決意です。/日本が国連のPKО活動に一層積極的に貢献できるよう法制度を整えたのも、その一環です」

 敗戦から11年後の1956年に、日本が国連加盟を果たしてから、この18日で60年を迎えた。満州事変をきっかけに前身の国際連盟を脱退してからは23年ぶりの国際社会復帰だった。

 冒頭は19日に、安倍晋三首相が東京・渋谷の国連大学で開かれた国連加盟60周年記念行事で述べた祝辞の一節である。記念行事は皇太子殿下御夫妻が出席されて行われたが、目立つ報道記事は小紙(20日付2面トップ)ぐらいで、各紙は短信記事か「首相の1日」に記録して残した程度の扱いだった。

 しかし、社説などの論調では産経を除いて「国連加盟60年」をテーマに国連の現状と直面する課題、日本の役割などについて論じたのである。

◆安保理改革を求める

 まず国連の機能不全に陥っている問題について。朝日(18日付)は「紛争解決に責任を果たすべき国連安全保障理事会も、目を覆う停滞ぶり」を次のように指摘した。「シリア内戦ではロシアが拒否権行使を繰り返した。ウクライナ、南シナ海、北朝鮮など、大国がかかわる地域で問題解決の道筋が示せない」と。全く同感である。

 小紙(18日付)はさらに、北朝鮮の核実験強行(今年9月、5回目)に対する安保理制裁決議が「採択まで2カ月半かかったのは、拒否権を持ち、北の体制崩壊を懸念する中国を説得するためだった」と指摘。シリア内戦では利権が絡む「ロシアが拒否権を繰り返し発動し、効果的な対応ができなかった」と具体的に例示した。

 こうした問題の根は、米英仏露中の安保理5常任理事国に拒否権という絶大な特権が与えられていることにあるのは言うまでもない。「特に中露両国は、この特権を平和のためではなく、自国の利益のために用いることが多い」ためである。

 だから、国連の機能不全は、創設から70年以上が経過し、その間に加盟国が当初の「51カ国から193カ国へ4倍近くになった。だが、安保理は、非常任理事国が6から10に増えただけ」(読売18日付)、安保理の「構成や意思決定の方法などほとんど変わっていない」(小紙)ことにあることは明らか。朝日も「常任理事国の枠組みを見直す改革を含め、日本は国連の機能を高めていく取り組みの先頭に、ぜひ立ってほしい」と求めている。

 一方で日経(19日付)は「国連に限界や欠点は少なくないが、ほかに代わりうる枠組みはない。新しい事務総長のリーダーシップにも期待したい」「米国が責任ある態度を示し、難題に立ち向かわない限り国連は機能しない」と指摘した。その上で、外交姿勢が読めない米国のトランプ次期大統領に懸念を示し、各国に建設的な関与を働きかけるよう呼び掛けた視点はいいが、朝日でも指摘している前述の中露の責任への言及が欠けているのは分かっていることだとしてもいただけない。

◆PKOの現実を直視

 もう一つは、日本の役割、建設的関与の一つとして、国連平和維持活動(PKО)について。毎日(18日付)がルワンダの大量虐殺(94年)を阻止できなかったことから、PKОが軍事力を使ってでも人命を守る活動へと変化している現実を直視。「今自衛隊が活動する南スーダンPKОもこの流れにある」。反対論はあっても「PKОには自衛隊のような実力組織にしか担えない任務があることも厳然とした事実である」と慎重な言い回しながら、駆けつけ警護の新任務実施に肯定的に向き合った主張をしていることは大いに注目されていい。小紙や日経などが言及している肯定的主張と並んだのである。あの毎日が。

(堀本和博)