LGBTへの「嫌悪感」に「意外」と驚くNHKハートネットTVの独善性
◆耳慣れぬカタカナ語
6日放送の「ハートネットTV」(NHKEテレ)のテーマは「LGBTとアウティング」だった。性的少数者の当事者が自ら望んで性的指向や性自認を告白することは「カミングアウト」と呼ぶ。
これに対して、他人が当事者の了解を得ることなく、ゲイ(G=男性同性愛者)、レズビアン(L=女性同性愛者)、バイセクシャル(B=両性愛者)であるとかを第三者に教えることは「アウティング」だ。番組に出演したトランスジェンダー(T)は「当事者でも、アウティングが怖いからカミングアウトするのが怖い。カミングアウトするのであれば、アウティングされるかもしれないというリスクを考えなければいけない」と解説した。
ちなみに、トランスジェンダーは「性同一性障害」と理解している人が多いと思うが、同番組のホームページによると、「生まれたときに法律的/社会的に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人のこと。心の性別と体の性別が一致しない人のことを指す医学上の診断名『性同一性障害』よりも広い概念で、当事者が自分達の生き方にプライドを持ち、名乗るときに好んで使われることが多い言葉」だという。
LGBT活動家やその支援者たちの使う言葉は耳慣れないカタカナ語が多い。かなり概念が曖昧な言葉もある。だから、一般の人がその言葉の意味を正確に把握するのは難しい。その上、こうしたカタカナ語を使う背景には、既成の概念や価値観を崩そうという意図があるから、それに同調しない人にとってはなおさら理解しづらいのである。
◆連合が職場意識調査
さて、番組企画のきっかけとなったのは今年8月、一橋大学法科大学院に通っていた男性の自殺だった。同級生にゲイであることを第三者に暴露されたこと、つまりアウティングされたことが原因だった。
アナウンサーの男性が「なぜ、LGBTの人たちがそこまで勝手に知られたくないと思ってしまうのか。実はこんな現状があるからなのです」と言って、「連合」が8月に発表したLGBTに関する職場の意識調査を持ち出した。
調査の質問項目に上司、部下、同僚などがLGBだったら「どのように感じるか」というのがある。その結果は「嫌だ」7・5%、「どちらかといえば嫌だ」27・5%、「どちらかといえば嫌でない」29・8%、「嫌でない」35・2%。上司、部下、同僚などがTだった場合は「嫌だ」6・4%、「どちらかといえば嫌だ」19・9%、「どちらかといえば嫌でない」34・7%、「嫌でない」39・0%だった。
LGBに関してはざっと3人に1人、Tに関しては4人に1人が嫌悪感を覚えるという調査結果をどう見るかは、その人間の価値観によって大きく異なるだろう。フリーアナウンサーの久保純子がこんな発言を行った。
「肌感覚としては、LGBTに関して理解が広まっているような気がしているが、この数字はとっても意外でした」「これだけ理解していない人がいるのに、打ち明けるのは怖い」
筆者にとってはまったく「意外」ではないのだが、久保の発言からは、LGBTを嫌うのは理解していないからだ、という思い込みがあることが分かる。また、理解していれば、嫌悪感を抱かないはずだと単純に捉え、LGBTが受け入れられるのは当然だという独善性も伝わってくる。嫌う人のことを、それこそ理解しようという姿勢に欠けているのだ。
◆伝統的価値観を否定
筆者はLGBTや「異性愛者」に人を分類することに違和感を覚えるし、同性間の性行為は嫌いである。また、同性の性行為を「罪」とする宗教もある。連合の調査で「嫌い」と答えた人の中には、自らの信念からそう答えた人もいるだろう。それを「理解していない」と決めつけるのは、特定の価値観を押しつけているのと等しい。
LGBT運動がはらむ危険性は、LGBTへの性的少数者への寛容を訴えながら、それに反対する人には「不寛容」「無理解」というレッテルを貼って、嫌いなものを「嫌い」という言論の自由、思想信条の自由を奪ってしまうことだ。性に関する伝統的な価値観を否定する“革命運動”と言っても過言ではないのだが、そのような危なっかしい運動をハートネットTVを中心にNHKは支援していることに、視聴者は気付くべきである。(敬称略)
(森田清策)