野党一本化の参院選を予測する各氏に共通する「共産党の“大躍進”」

◆「共産党抜き」を転換

 伊勢志摩サミットが終わり、オバマ広島訪問を成功させ、消費増税延期を発表して、その勢いで参院選に突入した安倍晋三首相。「安倍一強」と言われる現状で、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くのが「参院」である。改憲発議に必要な3分の2を参院でも確保したい。噂(うわさ)されていた衆参同日選をやめ、参院選一本に絞ったのも、既に数を持つ衆院は温存する策に出たものだ。

 この“安倍の勢い”に抗するために、今回野党はそれなりの策を練って臨んでいる。32ある改選1人区での野党統一候補の擁立である。しかも、これまで「共産党抜き」だった方針を転換して、これに加えた。政策的な整合性や思想的対立には目を瞑って、共産党の“勢い”にあやかろうという野合に他ならない。

 野党が文字通り“束になって”かかってくるわけだが、週刊誌が出す予測は野党にとって芳しくない。サンデー毎日(6月19日号)の「大予測」では自民党は改選議席で55をとり、非改選と合わせて120議席。与党公明党の24議席を合わせると144となる。これに「改憲勢力」とみなされるおおさか維新の会の14を合わせれば158、3分の2の162議席は目の前となる。

 統一候補で攻めにかかる野党はどうか。同誌の予測では議席増が見込めるのは共産党のみ。8議席増やして19となる見込みだ。他の野党は軒並みマイナス。民進党に至っては16議席も減らすと見られている。野党共闘は結局、共産党を利するだけに終わりそうという見方だ。

◆1人区で情勢変わる

 週刊朝日(6月17日号)でも同じような予測であるが、「政治評論家の浅川博忠氏」の分析では「自民党127、公明党25、おおさか維新の会10」で合わせて「162議席」になる。3分の2に到達するという予測を出している。一方「政治ジャーナリストの角谷浩一氏」は「自民116、公明23、維新11」で「150議席」と厳しい。しかし、3者に共通しているのは「共産党が“大躍進”する」ということだ。

 野党統一名簿の効果についてはどうか。浅川氏が与党の「29勝3敗」と見ているのに対して、角谷氏は「20勝12敗」と大きく違う数字を出した。福島の岩城光英法相、沖縄の島尻安伊子沖縄北方担当相の2人の現職閣僚が「落選の危機」に立たされているという見方だけは共通している。

 また同誌は複数区の分析も載せているが、東京、神奈川の混戦模様、全国比例区での話題候補なども取り上げており、読ませる。

 これから投票までの1カ月で情勢はいかようにも変わるのが選挙戦だ。同誌で浅川氏と角谷氏の2人が大きく違う数字を出しているように、接戦の1人区の当落で勢力図はガラリと変わってしまう。選挙後、週刊誌はまた別の顔で結果を報じる。

◆本質の見極め不十分

 サンデー毎日が共産党元委員長の不破哲三(86)氏のインタビューを載せた。「共産抜き」を突破し、すべての1人区で野党共闘を実現させたタイミングで、同党の「理論的支柱」である不破氏を登場させる編集意図は何か、考えさせられる。

 共産党が“仲間外れ”から抜け出すきっかけについて、不破氏は2年前の「オール沖縄」で名護市長選、知事選、総選挙を戦い、「共産党に対するアレルギーを取り除いて行った」ことだと述べた。しかし、これはどうだろうか。オール沖縄の立役者は同党ではなく、翁長雄志知事その人ではなかったか。

 翁長氏は那覇市議、県議会議員、那覇市長時代を通じて自民党保守勢力のど真ん中にいた人物だ。普天間基地の辺野古移設でも積極的な役割を果たした。それが、手のひらを返すように、知事選で保守の最大会派を道連れに共産党や革新諸派勢力と野合した。オール沖縄の本質はこれなのである。もし共産党の“手柄”だと主張するなら、「翁長取り込み工作が成功した」と言うべきだろう。

 インタビューした「サンデー時評」の「重倉篤郎」氏は、「共産党の変身」という言葉を使った。本当に同党は変わったのだろうか。本質は不変ではないのか。その辺の見極めが不十分に見える。

(岩崎 哲)