月刊朝鮮の米大統領広島訪問評、日米関係深化に複雑な韓国

「愚を犯さない」対応と指摘

 オバマ米大統領の広島訪問は日米関係で画期的歴史的なものとなった。かつて戦った者同士が戦争の最大の傷跡である被爆地を共に訪ね、犠牲者を慰めた。互いを非難することなく謝罪を要求することもなく、ただ原爆の悲惨さを直視し、犠牲者を慰霊・慰労し、「核なき世界」を祈った。

 こうした日米関係の深化を複雑な思いで眺めていたのが韓国である。外交官を辞めて、ソウルに日本式のうどん屋を開いたというユニークな経歴を持つシン・サンモク「桐山」代表が「月刊朝鮮」(6月号)に「原爆問題を見る日本人たちの見解」を書いている。

 戦後、日本政府は多大な民間人犠牲者を生んだ原爆投下は国際法違反だと主張していたが、1963年の「下田裁判」を契機に180度転換し、追及をやめた。その理由をシン氏は、①きっぱりと負けを認める武士道的価値観②戦後復興と日米同盟体制強化を優先③米の戦争犯罪追及は日本にも返ってくる―という吉田茂首相の判断が働いていたと分析する。

 なによりも、▽戦時の行動を「平時の概念」で裁くことはできない。▽敗者が勝者の責任を論じるのは恥ずかしいこと。▽遡及(そきゅう)法で責任を問うのは国際法の原則に合わない―という解釈が日本政府、日本人の中にあったと紹介する。

 「韓国人には共感の余地が少ないだろうが、これが日本主流の戦争または歴史認識と言える」とシン氏はいう。そして、「このような認識は日本社会が慰安婦問題を眺める見解の底辺にも敷かれている」と指摘する。

 ここで、シン氏が「だから韓国も同じようにすべきだ」といえば、ソウルのうどん屋はその日のうちにも打ち壊しに遭うだろう。シン氏は「日本からはそう見える」と慎重に言葉を選んでいる。

 日本はまず「敗戦を受け入れ」「未来のために過去を超える現実的戦略的な思考をして」原爆を落とした仇敵米国と同盟関係をますます深め、「自らに返ってくるような両刃の剣を振り回す愚を犯さない」対応を取った。「そういう彼らの視点で韓国は果たしていかなる国か」というのだ。だが言えるのはここまでである。

 シン氏の言葉をあえて「翻訳」すれば、こうなるだろう。当時の失政愚政を棚に上げて併合の一方だけを悪辣(あくらつ)だと罵(ののし)り、地政学的戦略的に深めるべき隣国関係に歴史問題を持ち込んで足を引っ張り、追及して行けば親が娘を売ったり、同民族の業者が騙(だま)して過酷な職場に連れて行ったというような“都合の悪い事実”が山ほど出てくる、と。

 さて、オバマ広島訪問では、ソウルの米大使館前で「韓国人被害者に謝罪と補償」を求めるデモが行われた。そして「韓国人慰霊碑にも献花せよ」という主張がメディアを通じて伝えられた。原爆投下によって日本の敗戦が早まったのであれば、それで解放された韓国・朝鮮人は米国に感謝こそすれ、謝れという筋合いのものではない。いかなる場面でも「被害者」でいたがる、というのも理解し難いことだ。

 だが、さすがに「良識」は存在する。ネットメディア「趙甲済(チョガプチェ)ドットコム」に「オバマが献花しないのを惜しむ前に」という記事が投稿された。常連の投稿者「ヴァンダービルト」氏によるものだ。

 同氏は、オバマ氏の広島訪問でさえ難しい状況で、日本政府はそれを乗り越えて実現させたのに対し、韓国政府は米側と何か事前調整を行ったのか。安倍首相がエスコートしたが、韓国からは誰が出ると考えていたのか。大使か。朴槿恵(パククネ)大統領はサミットにも出ずにアフリカを訪問していた。日本人は謝罪を要求していないのに、韓国だけは謝罪と補償を求めるのか、と問う。辛辣(しんらつ)である。

 さらに平和公園を日本人は誠意をもって管理している。韓国政府関係者で韓国人慰霊碑を訪ねた人は何人いるのか。そもそも普段管理(清掃)されているのか。

 「オバマ大統領が韓国人被爆の事実に具体的に言及したことで満足しなければならない」「強欲は捨てるべきだ」の指摘に共感する。