五輪エンブレム、機運再び盛り上げる機会に
2020年東京五輪・パラリンピックの大会エンブレムがようやく決まった。
大会のシンボルが定まったことを機に、いろいろなことで水を差された大会への機運がもう一度盛り上がり、準備作業に弾みが付くことを期待したい。
「組市松紋」が選ばれる
旧エンブレムが、ベルギーの劇場ロゴとの酷似を指摘されるなどして白紙撤回されたのを受け、昨年11月に新エンブレムの一般公募を開始した。1万4599作品から複数の審査を経て最終候補4作品に絞り、アーティストの野老朝雄氏のデザインした「組市松紋」が選ばれた。
この過程で商標調査を行い、延べ4万人超の国民から集まった約11万の意見も参考にした。旧エンブレムの使用中止で指摘されたいくつかの反省を踏まえ、「参画と透明性」を確保するためである。
「組市松紋」は、エンブレム委員会の委員21人による1回目の投票で過半数の13票を獲得して承認された。江戸時代に市松模様として広まったチェック柄を日本の伝統色である藍色一色で描いた。委員長の宮田亮平文化庁長官は「市松模様は歴史的にも世界中で愛されている。1色で寡黙でありながら多弁。日本人らしさを秘めている」と述べている。
ほかにも「日本の伝統、粋を感じる」あるいは「クール」という声が聞かれる。何よりも、エンブレムが個性的で、日本らしさを感じさせるものであることを評価したい。
エンブレムは大会のシンボルとして、これから世界に発信され、大会や日本のイメージと深く結び付くことになる。20年東京五輪・パラリンピックは、スポーツの祭典であると同時に平和、文化の祭典でもある。日本らしさ、また東京という町が昔から受け継ぐ江戸の「粋」をそなえたデザインは、象徴としてふさわしい。
旧エンブレムの白紙撤回によって、エンブレムの決定が遅れたことがもたらした大会準備への影響は小さくない。エンブレム使用料による収入は大会の財政的問題と直結する。
何より心理面においてエンブレムが果たす役割は大きい。このエンブレムがさまざまな所で目に付くようになれば、大会への気分も盛り上がるだろう。4年後の五輪を目指して練習するアスリートたちを奮い立たせ、日々の練習の支えともなる。
1964年の東京五輪成功の大きな要素の一つは、国民の強い思いであり熱気であった。それが、政府や東京都、組織委員会を後押しすることになる。 エンブレムの選定は東京五輪準備のための数多い課題の一つにすぎない。新国立競技場の聖火台をどこに置くかなどの問題もある。遠藤利明五輪担当相の下でワーキングチームが検討中だ。月内にも結論が出るとのことだが、ほかにも夏の暑さやテロへの対策などを早く検討し、準備を進めなければならない。
司令塔の役割が重要
これら一つ一つの懸案を着実に、しかも整合性を持たせて解決していかねばならない。そのために、大会の全体を見渡す司令塔の役割がますます重要となってくる。