15年の日本、未来への展望を開いた1年
いま東映系で公開中の日土合作映画「海難1890」は二つの史実に基づいた日本とトルコの名もなき人々の素朴な善意を描いている。
安保関連法が9月に成立
昭和60(1985)年3月、イラン・イラク戦争下のテヘラン空港に欧米各国は自国民の帰国救援に軍用機や民間機を差し向けた。しかし、日本は民間機を手配できず、自衛隊機も憲法の制約で飛べなかった。テヘラン空港で帰国便のあてがつかず立ち往生する日本人200人余に、救いの手を差し伸べたのはトルコの救援機の座席を譲ってくれたトルコの人々であった。
映画の半分はこの友好・友情のエピソードを綴るのであるが、私たちは感動からさらに思索を深めて教訓を得なければならない。なぜ、自衛隊が自国民救援に出動できなかったのか? 9月の「関東・東北豪雨(茨城などで8人死亡)」(今年の本紙国内10大ニュース第10位)で、堤防決壊の豪雨による死者が8人ですんだのは、自衛隊の何十人もの命を救う救助活動のおかげだ。そのようにテヘラン空港へはなぜ、飛べなかったのか。
そうした憲法上の制約を取り除き、米国との同盟関係を強化・深化させて国民の命を守れるようにしたのが9月の「安全保障関連法が成立」(同第1位)である。「戦争法案」だとするプロパガンダに与するメディアの影響で論争を呼んだが、「平和安保法」の成立でようやく日本も普通の国に近づいた。「TPP交渉が大筋合意」(第4位)とともに、国際社会で日本は世界の安定と平和、経済成長と繁栄に貢献しなければならないのである。
「両陛下、戦後70年でパラオ御訪問」(第2位)、「安倍首相が戦後70年談話発表、米議会両院合同会議で初演説」(第6位)、年末に飛び込んできた「『慰安婦』日韓合意/『最終、不可逆的』を確認」(第7位)は戦後70年の節目の年に実った意義深いニュースと言える。今年が未来への展望を開く1年であったことを改めて印象付けた。
また、最高裁が「夫婦同姓規定は合憲、再婚禁止100日超は違憲」(第8位)とした判断は、近来の風潮に流されることなく家族制度の意義を積極的に認めたもので大いに評価したい。
科学とスポーツでもニュースが世の中を明るくした。昨年の日本人3氏に続いて今年も「ノーベル賞に大村、梶田両氏」(第3位)が輝いた。「『あかつき』金星周回軌道に投入成功」(第10位)や初の商業衛星打ち上げ成功、探査機「はやぶさ2」の小惑星への針路向け成功などもある。スポーツでは新国立競技場問題(7月)、エンブレム白紙撤回(9月)など「2020東京五輪の準備でゴタゴタ」(第9位)した一方で、「日本人アスリートの大活躍」(第10位)があった。ラグビーW杯で日本が南アフリカを破るなど3勝。体操やバドミントンでも日本人選手や団体が世界の頂点に立った。
社会の劣化示す不祥事
一方で、東芝の不正会計や横浜市のマンション傾斜で発覚した基礎工事のデータ改竄など「相次いだ企業不祥事」(第5位)は、ものづくりを誇った日本社会の劣化を示す深刻な問題を提起しているのである。
(12月31日付社説)