普天間移設問題、市民軽視の翁長知事に怒り

宜野湾市民訴訟の初公判

 米軍普天間飛行場の移設問題で、同飛行場周辺に住む宜野湾市民12人が沖縄県に対し取り消しの無効確認と県と翁長(おなが)雄志知事に慰謝料を求める訴訟の初公判が22日、那覇地裁(森鍵一裁判長)で行われた。また、同飛行場の早期移設を求める宜野湾市民の署名が26日時点で1万筆集まった。一日も早い危険性除去を願う市民の声に真摯に向き合わない県に市民の怒りは高まっている。(那覇支局・豊田 剛)

「墜落事故の再発が心配」原告団長

早期移設求める署名は1万筆

普天間移設問題 宜野湾市民訴訟の初公判

初公判後、記者会見した平安座唯雄団長(右から3人目)ら宜野湾市民訴訟団=22日、沖縄県庁記者クラブ

 裁判では、原告は沖縄県と翁長雄志知事に承認取り消しの無効確認と1人当たり1000万円、計1億2000万円の慰謝料を求めた訴訟の第1回口頭弁論が22日、那覇地裁であった。市民側は、取り消し処分で飛行場が固定化し、移設ができなくなることで、騒音による生存権侵害が続くと主張した。また、1人当たり100万円の慰謝料を求めた89人の追加提訴が認められ、賠償請求額は計2億900万円になった。

 初公判を終え、原告団の平安座(へんざ)唯雄(ただお)団長(宜野湾市民の安全な生活を守る会会長)は「基地は動かしてほしいが反基地運動ではない」と前置きした上で、「真に友と言える国はどこなのか」と問い掛けた。「来年4月には日米両政府が合意してから20年になるが、県はまるで宜野湾に人間がいないかのような振る舞いだ。宜野湾市民の命がまるでジュゴン以下のように見えてしまう」と胸の内を明かした。

 11月には普天間飛行場を離着陸する航空機にレーザー照射した容疑で宜野湾市在住の男性が逮捕された。これは一歩間違えば大惨事を招きかねず、「11年前の沖縄国際大学のヘリ墜落事故のような大惨事が起きないか心配だ。知事は権限を乱用し、宜野湾市民の苦しみを増やしている」と平安座氏は訴えた。

 原告代理人の徳永信一弁護士は、本質は国と県の対立ではないとした上で、「辺野古移設は日米両政府、沖縄県民が認めたところに出発点があることをもう一度確認すべき」だと指摘。「どんな苦しみでも耐え忍ばなければならない場合、いつ解放されるのか分からない。その方々の気持ちを酌み取ってください」と市民の気持ちを代弁した。

普天間移設問題 宜野湾市民訴訟の初公判

初公判が行われた那覇地裁

 また、「宜野湾市民や(尖閣諸島が所在する)石垣市民、辺野古区民の声を聞いていない。県民が見えているものを見えていないのに『オール沖縄』と主張するのはへそで茶を沸かす典型例だ」と述べた。

 実際、翁長氏は1年前に知事に就任して以来、宜野湾市民の負担軽減や危険性除去に取り組んでいない。知事になってから普天間飛行場を視察したことがあるかという花城大輔県議(自民)の質問に対し、翁長氏は「(移動中に)車中から眺めています」と珍回答。また、呉屋等市議(自民系)の同様の質問に対し市当局は「宜野湾市を介しての翁長知事の視察は一度もない」と述べた。

 さらに、平成26年2月に会議が発足した普天間飛行場負担軽減会議は、昨年は3回の会議を行ったが同年10月を最後に開催されていない。佐喜真淳市長が翁長知事へ2度も開催を要請したが、実現できていないことが市当局の答弁で明らかになっている。

 宜野湾市民の基地負担は市が設置している「基地被害110番」には8月で49件、9月で54件、10月で102件の計205件の苦情が寄せられた。10月の1カ月当たりの苦情件数は2002年の苦情受け付け開始以来、過去最多だ。

 佐喜真氏は21日、市内で開かれた集会で「騒音に対する苦情は過去最多を記録し、低空飛行を続けるヘリがいつ落ちるか分からない現状にある。怖くて眠れないという市民の苦しみがある」と悲痛な訴えをした。

 佐喜真氏は先月末、市自治会長会、子供会、老人会など市内9団体の代表者らと市役所で記者会見し、普天間飛行場の早期閉鎖・返還、同基地所属のMV22オスプレイの県外移駐および米軍機騒音の軽減を求める共同声明を発表したのに続いて県に要請した。当時、「県側は当日まで要請も受けず会わないと言ってきたが、直前になって安慶田(あげだ)光男副知事が対応した」と、佐喜真氏は県側の誠意のなさに怒りをあらわにした。

 提訴して以来、「市民から共感の輪が広がっている」と平安座団長は手応えを感じている。市民の危険性除去と固定化反対に対する願いは、具体的な署名活動となり、26日までに市民だけで1万筆の署名が集まった。

 一方、県側は過重な基地負担を生み出しているのは米軍で、施設を提供する日本政府に責任があり、県の責任は問われないと主張、市民側に訴訟を起こす資格「原告適格」がないとして請求の却下などを求めた。次回は来年2月23日。