普天間基地、中国の野心阻止へ解決を
安保情勢と普天間移設
沖縄の米軍問題を考える会代表 松谷秀夫(中)
普天間基地は正式には、米国太平洋軍海兵隊普天間飛行場と呼ばれている。面積は480㌶、標高は75㍍と高台にあり東日本大震災で発生した津波と同様な事態においても浸水しないとされている。配備されている人員はおよそ3000人。そのうち司令部機能や、整備、飛行管制などを除く70%は6カ月程度の交代勤務となっている。
台風、地震、津波その他の激甚災害の発生については、国連の要請によって緊急災害派遣を行う。これまで、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、インド、マレーシア、ネパール、台湾、阪神淡路大震災、東日本大震災など多くの災害派遣を行ってきた。宜野湾市と普天間基地との間で、災害発生のとき市民の普天間基地内への避難経路を可能とする協定(2012年11月5日)が結ばれ、新たに滑走路を囲むフェンスが設置された。また非常時に、安全な離発着ができるようにオスプレイ用にヘリパッドも新たに整備された。
機能としては第262、265飛行隊は非常時に兵員輸送や負傷者、住民避難などの航空機動作戦を即応展開し、重ヘリ部隊は敵前線において特殊部隊の投入を行い、敵となる勢力の侵攻を阻止する。兵站部隊は必要な物資、弾薬、薬品、食料、燃料などを迅速に補給、攻撃ヘリ隊は、敵上陸戦力に対する攻撃や艦船などの島嶼接近阻止作戦を展開する。
海兵航空管制隊は有事、現場において即応管制機能を立ち上げ航空機や艦船への戦時管制を開始し、作戦の円滑な遂行を支援する。戦術指揮隊にあっては衛星を含めあらゆる情報を集約し分析、必要な武器弾薬、航空機、艦船など適切な展開行動を司令部参謀本部に伝え戦術的に最も優位な状態を作り出す。さらに、航空支援隊は整備、修理、部品供給など能率的な作業を素早く開始する。
このように普天間基地配備の海兵隊は有事に即応態勢を展開し最前線を確保、自衛隊や在日海兵隊第31遠征軍先駆け部隊として琉球列島の防衛に絶対不可欠な存在となっているのだ。それだけに、どのようにして危険性の除去や心理的負担の軽減を図るか、いま一度考える事が必要だ。
まずは戦後70年に及ぶ普天間基地があるために生じた市民生活の損失、例えば上下水道の基地外周工事によって割高になる上下水道などの公共料金、基地迂回のため生じる交通料金の補填、徹底した安全管理、騒音問題、これから生じる基地使用期間の完全な保障などが挙げられる。
名護市辺野古への普天間基地の移設計画が順調に進んだとしても、最低10年間、普天間基地使用は続くと米国側は明らかにしている。それは中国の一方的ないわゆる九段線と呼ぶ彼らの琉球列島を含む領土領海構想の阻止に米国としては決して後ろを見せない姿勢を取らざるを得ないからだ。いずれ国際情勢の変化によって沖縄からの撤収かあるいは軍事力の縮小なども考えられよう。だが普天間の即時閉鎖や5年以内の使用停止など実現できない政治的発言で県民、市民を惑わすのは好ましいことではない。現実を直視して県民、特に宜野湾市民に特段の配慮が求められよう。
沖縄県の翁長知事の埋め立て承認の取り消しをめぐり、県、国、双方による裁判闘争に入っている。だが、日米関係の将来に関係し極東アジア全体の平和と安定に重大な影響を及ぼす中国の野心的目論見をあくまで阻止するため、普天間代替施設とされるこの辺野古への移設問題は解決しなければならない。