ISテロと米軍誤爆を同じに扱う報ステ・古舘氏を見逃さない新潮
◆反米親テロリスト?
「日本の言論空間は異質だ」と週刊新潮(12月3日号)は呆れ嘆く。その通りだ。たとえ日本に侵略軍が押し寄せても、憲法九条をかざせば、その「崇高な精神」に怖れをなして、すごすごと引き返す、というマンガのようなことを真剣に信じている輩が一定人数いるのだ。
フランスのパリで起こった過激派組織「イスラム国」(IS)による同時多発テロ事件でも同じ反応が出ており、早速週刊新潮が噛みついた。テレビ朝日の報道ステーションキャスターの古舘伊知郎氏だ。もともと「芸能枠」で扱われるこの人はジャーナリストではない。プロレス中継で名を成したアナウンサーである。
「報道」を冠しているが、夜のニュースワイドショーである同番組で、「誤爆もテロですよね」と主張した。米軍の誤って投下した爆弾で「無辜の民」が死亡した事例を取り上げて、まるでISのテロを相対化し“薄める”かのような発言を、したり顔で行う。
この人には、明確に殺す意思があって爆弾を破裂させたISと、不幸にも誤爆に遭って死亡した事故が同列の「テロ」と見えるらしい。確かに誤爆は悲劇だ。無くしてほしい。だが、有志連合によるシリアのIS空爆を引き起こした最初の引き金はISによるテロだ、ということが都合よく忘れられている。
その忘れっぷりは19日の放送によく現れていた。同誌はいう。
「ISの美点ばかりが描かれた、イスラム国の宣伝映像を『解析のため』に5分間放映。続いて、アメリカの誤爆で家族を失い、自らも怪我を負ったパキスタン少女のインタビューを流す。そして別のコーナーでは、『安保関連法案』が成立した2カ月後の国会前デモの様子を扱い、『めんどうくさかろうがなんだろうが、知っておかないと世界の糸口を見つけることは出来ませんよね』。
これをマジメに見た大半の視聴者の心に映った『世界』の像は、きっとISの洗練された立ち居振る舞いと、アメリカ、そして、それに追随する日本政府の非道さや愚かさ、といったところであったであろう」
◆「現実味欠く」と批判
「一見、共に聞こえのよい正論」だが、報ステの報道は事実に基づかない。有志連合の空爆はISの拠点、資金源となっている石油施設だ。もしこれを叩いておかなければ潤沢な資金でますますテロを繰り返し、バグダッドにまで勢力範囲を広げただろう。
有志連合の誤爆による死亡者は「1年間で計200~300人と推計されるという」のに、ISは「占領地域で、民間人を数千~1万人近く処刑、虐殺して」いる。こうした数字は報ステでは取り上げられない。
「空爆をテロと同一視する議論は、基本的な価値判断から大きく逸脱した、論外の主張だと思います」と「京都大学名誉教授の中西輝政氏」は同誌にコメントしている。
また古舘氏は、「(ISとの)対話を避けている場合ではないと思います」と述べ、軟着陸のための対話を模索すべきだと主張する。
これに対して同誌は、「飯塚正人・東京外大教授(イスラーム学)」の話を聞いている。飯塚氏は、「ISにしてみると、もし国際社会が“対話したい”と言うのなら、まず“俺たちの国の存在を認めろ”というところから始まるでしょう。しかし、“テロリストとは交渉しない”というのが、国際社会の共通ルール。(略)“対話”などと言っても現実味の欠片もないのです」と指摘する。
◆「狡猾言動」と中西氏
それにISは女性を拉致し、奴隷制を復活させ、異教徒へは強制改宗を行っている。日本人を含むジャーナリストを斬首し、捕虜には残虐な処刑を行う。それらの映像はインターネットの動画投稿サイトを通じて世界中に知られている。
それでも「対話を」と繰り返す古舘氏を中西教授が一刀両断した。「彼だって、人間の社会で何が可能で不可能なのか、先刻ご承知のはず。(略)“僕は暴力が嫌いです”“平和を愛します”と言う。“天使のように心の清らかな自分”とアピールし、自らを売り込もうとしているに過ぎない。(略)非常に利己的で目先のことだけを考えた、狡猾な判断の上での言動であると思うのです」
中西先生に100%賛同。
(岩崎 哲)





