日米首脳会談、対中抑止で一層の連携強化を
安倍晋三首相とオバマ米大統領はきょう、フィリピンのマニラで日米首脳会談を行う。4月に安倍首相が訪米し、ワシントンで行われて以来7カ月ぶり。日本としては、9月に成立した安全保障関連法が果たす役割についても改めて強調し、日米同盟の強化に向けた取り組みを確認する絶好の機会である。
南シナ海問題などを協議
安倍首相は23日までフィリピン、マレーシアを訪れ、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や東アジアサミットなどに出席する。この間に日米首脳会談が行われる。中国が人工島造成を一方的に進める南シナ海などでの安全保障協力や早期発効を目指す環太平洋連携協定(TPP)の今後などについて協議する見通しだ。
トルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議では、直前に発生したパリ同時テロを踏まえ、テロリストの資金源遮断に取り組むことを明記した声明を採択した。首脳会談でもテロ対策での連携強化が求められる。
神奈川・横須賀港を拠点とする米第7艦隊所属のイージス駆逐艦「ラッセン」は先月、「航行の自由」を守るため、南シナ海の人工島の12カイリ(約22㌔)内を航行し、3時間近く巡視活動をした。今後、3カ月に2回程度行うという。
米国や東南アジアの国々の多くは、中国が人工島を領有権主張の根拠としていることに懸念を抱くばかりでなく、いずれは力ずくで主張を押し通すのではないかと危惧の念を持っている。中国は過去1年間に南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺で七つの人工島を建設してきた。中国本土の沿岸から約1000㌔㍍離れた人工島には、中国の軍用機の上空巡回を可能にする施設がある。
米艦の12カイリ派遣はもっと早期にやり、中国と対抗すべきだったとの声も強いが、対中配慮を徹底してきたオバマ大統領としては思い切った決断だった。今月に入ってからも人工島に近い空域でB52戦略爆撃機2機を飛行させた。オバマ政権の本気度の高さが示されたとみてよい。
首脳会談で、安倍首相は米国が南シナ海で行った作戦への支持を伝える方針だ。自衛隊による南シナ海での警戒監視活動について、首相は国会答弁で「様々な選択肢を念頭に置きながら、十分な検討を行っていきたい」と述べたが、日本経済にとっても南シナ海の航行の自由は極めて重要だ。米作戦に具体的な協力をする必要がある。
一方、中国海軍の情報収集艦が沖縄県石垣市の尖閣諸島に近い公海上を東西方向に行ったり来たりするような航行を1日余り続けた。この海域で中国軍艦の活動が確認されたのは初めてという。日本政府は、中国が米軍による南シナ海での活動を牽制したものと分析している。
東シナ海でも監視徹底を
中国は最高実力者、故鄧小平氏の存命当時に樹立した南シナ海、東シナ海内海化計画に基づいて着々と実績を積み上げてきている。南シナ海で起きていることが、東シナ海で起こらないとも限らない。今後、自衛隊による警戒監視を徹底しなければならない。日米連携をますます強化することが必要になる。
(11月19日付社説)