露の戦略的立場強化、イランとサウジの仲介も
ロシアのシリア内戦介入アルアハラム財団事務局長 モハメド・F・ファラハト氏に聞く(2)
――エジプトとサウジ間には誤解はないのか。
サウジはシリアのアサド政権に強く反対し、アサド政権を崩壊させようと努力している。シリアにスンニ派政権の樹立を願っている。サウジはシリアの民主化には関心がないが、イランとの戦いに関心がある。アサド政権はこの地域でのイランとの同盟国の一国だ。
しかし、エジプトとサウジには共通の利益がある。アサド政権がたとえイランと良好な関係を持とうと、この地域でのアラブの利益に関して反対することはない。エジプトとサウジは、イランの影響力がアラブに及ぶことに対しては、同じ見解を持っており、エジプトはイエメンでのアラブの立場を支持している。
――サウジにとってイラン問題がより重要ということなのか。
そうだ。将来、中東に対するロシアの影響力が強まることや、米国が影響力を残そうとすることについて話すなら複雑だが、私の意見は、①イランについて、湾岸協力会議(GCC)諸国と欧米間には誤解やギャップがある②この地域に対するロシアの影響力は、シリア内戦軍事介入を機に次第に増していく③米国はアフガンとイラクでの経験後、極東に関心を払うようになる――ということだ。
最近届いた米国からのリポートは、将来米国は中東から引き揚げるだろうと展望している。米国の中東における影響力が減少し極東で増大する。この3つの主な戦略的変更はGCC諸国と米国、アラブ諸国の関係に影響を与えるだろう。
欧米とイランとの核合意はGCC諸国にある種のショックを与えた。なぜならこの合意はイランと欧米間の政治的・経済的に積極的関係を進めるからだ。
――ロシアの影響力はエジプトとイラクにかなり及ぶか。ロシアに今後近づくのはサウジかアラブ首長国連邦(UAE)か。
もしロシアが決断するなら、サウジと戦略的な関係を築くのは簡単だと思う。なぜならロシアは、イランとの良好な関係などの全ての鍵を握っているからだ。ロシアが、もし、サウジやイラクに対し、イランは中東地域における彼らの権益を侵害しないとの保証をすれば、ロシアはサウジとイランを妥協させることができるだろう。
イランだけでなく、ロシアは、サウジやエジプトなどのアラブの鍵を握る国々と戦略的関係を持つだろうと思う。
――オバマは軍事的・外交的に無能だと批判されているが。
米国はアラブ諸国と戦略的関係を構築することに失敗した。かつてイランで何が起きたか。アフガニスタンとの関係構築も失敗した。米国はイラクでも安定した民主主義国家の創建に失敗した。
米軍のサダム・フセインに対する軍事作戦の主要な目的の一つがイラクに民主国家を立てることだったが、失敗した。イラクの民主化を成功させて、アラブ諸国を次々に民主国家にするのが目的だったが、すべて失敗した。アフガンとイラクではテロがいっそう強力になった。9・11の時よりももっと強大になった。米国は今、民主主義をアラブ諸国に創建するビジョンを持っていない。
(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)