高齢者は熱中症に特に注意と予防策を
日本列島の広い範囲で厳しい暑さが続いており、東京では1週間連続の猛暑日となった。こうした中、熱中症で病院に搬送されたり死亡したりする人が後を絶たない。
救急搬送が過去最多
熱中症は、重症になれば命に関わる。健常者であっても、油断すると深刻な症状になりかねない。
総務省によると、7月27日から8月2日までの1週間に熱中症で救急搬送された人数が1万1672人(速報値)に上った。2008年の調査開始以来、過去最多という。
搬送された人のうち、死亡したのは25人で、3週間以上の入院が必要な重症者は312人を数えた。
1週間で救急搬送された人が1万人を超えるということは、数十年前には予想もしなかったことだ。異常な事態と言える。猛暑の日には、国民が深刻な健康被害のリスクにさらされているという認識が必要だ。
特に高齢者は、気温の変化に対する敏感さが鈍り、体温調整機能が衰えている。十分な注意が欠かせない。
7月27日からの1週間に救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者は5689人と、全体の48・7%、半数近くを占めている。
高齢者の場合、身体の衰えとともに、かつての経験から暑さをやや甘く見る傾向があることも考えられる。
だが地球温暖化などの影響で、昨今の夏の暑さは以前とは次元を異にしていることを知っておくべきだろう。
熱中症と言えば、屋外の炎天下にいて罹(かか)るものと思われがちだ。しかし、高齢者が気温の上昇した室内で亡くなったという例も多い。屋外でなければ安心感があるかもしれない。だが、屋内こそ注意を払わなければならない。
屋内では、エアコンや扇風機などを利用して気温が28度を超えないようにすることがポイントだ。
高齢者の中には、かつての生活習慣からエアコンを嫌う人もいる。しかし今の暑さへの対策は、扇風機だけでは効果が十分でないことが多い。周囲の人が室温の調整の仕方を教えるなどしてサポートすることが求められる。
都市部に暮らす一人暮らしの高齢者などは、熱中症に罹る危険が特に高い。都市部は夜間でも気温が下がりにくく、熱帯夜になることが多い。こうした人々に熱中症について啓蒙(けいもう)し、できれば時々見回りをして様子を確認することも大切だ。都市部では、自治体や町内会に、熱中症予防に向けた支援を強化してもらいたい。
若い人たちは、暑さの中でもクラブ活動その他で、激しい運動をする。夏こそ体を鍛える時であることは間違いないが、熱中症の危険と隣り合わせであることを忘れるべきではない。指導・監督者は十分に配慮してほしい。
水分と塩分の補給を
厳しい暑さは当分続きそうだ。こまめに水分を補給し、塩分も適度に取り、熱中症対策を十分に行って、この夏を健康に乗り切っていきたい。
(8月7日付社説)